福島原発のデブリ「試験的取り出し」その意義は? 更田豊志・原賠機構上席技監に展望を聞く

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――今回の試験的取り出しでは、準備作業でガイドパイプを並べる順番を間違えたうえ、東電や元請け企業がその確認をしておらず、一時中断に追い込まれました。

東電の現場把握が十分でなかったと指摘されているが、原因をあまり簡略化すべきではない。現場については東電よりも協力企業のほうが熟知しており、現場力の低下によるものではない。

悔やまれるのは、取り出し装置を設計する際に、現場作業にもう少し配慮した設計をしていればよかったということだ。先頭に当たる1番目のガイドパイプには穴がなかった一方、2~4番目には前後とつなぎ合わせるために穴が開けられていた。1番目にも穴を開けていれば順番にこだわらずにつなぎ合わせることができ、作業ミスを防げたかもしれない。

ふけたとよし/1987年東京工業大学大学院・理工学研究科博士課程修了。同年日本原子力研究所入所。その後、日本原子力研究開発機構・安全研究センター副センター長などを経て、2012年原子力規制委員会委員。2017年から2022年まで原子力規制委員会委員長。2023年東京大学大学院・原子力国際専攻上席研究員。2024年原子力損害賠償・廃炉等支援機構上席技監(撮影:今 祥雄)

今回、試験的取り出し作業の現場では、作業員は全面マスクをはじめとした重装備をしていた。そうした厳しい作業環境下で、前の日の作業と次の日の作業に関してうまく意思疎通ができていなかった。こういうことを言うと叱られそうだが、こういうミスは二度と起きないということではない。

さらに言えば、これだけ大きな騒ぎになってしまうと、現場はよけい緊張してしまう。適度な緊張感は必要だが、過度の緊張感を持つことはある意味では危険だ。単純なミスの割には大ごとになってしまった。

取り出し箇所を増やしていく必要

――今回の試験的取り出しでは1回当たり3グラム以下の採取を、最大で4回実施します。今後も長い年月をかけて試験的取り出しを繰り返していくことになるのでしょうか。

試験的取り出しという言葉を使うかは別だが、取り出し規模の拡大に加え、採取箇所をいろいろな場所に展開していくことが課題となる。今回は、圧力容器を突き抜けて落ちてきたものの取り出しだが、今後はより炉心に近いところの採取を狙っていきたい。ただ、やるとなると格段に難しさが増してくる。東電にとっても挑戦となる。

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