福島原発「デブリ採取より廃炉計画見直しが先決」 松久保肇・原子力資料情報室事務局長に聞く

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――デブリ回収作業では、作業員の放射線被曝も懸念されます。

今回の試験的取り出し作業の計画では、作業員の被曝線量の目標値は12ミリシーベルトに設定されている。職業人の年間許容被曝量(1年で最大50ミリシーベルト、5年では累積100ミリシーベルト=年平均20ミリシーベルト)に照らしても、非常に高い値だ。

放射性物質を取り扱うグローブボックスでの作業など、人手を介する作業が多いためだが、なぜもっと自動化できなかったのか、疑問を感じる。本格的取り出しに入るとさらなる被曝を伴うだけに、きわめて困難であることを浮き彫りにしている。

廃炉計画そのものを見直すべき

――原子力資料情報室の声明文では、「このように過酷で無意味なデブリのサンプル採取を行うのではなく、国や東電は廃止措置(=廃炉)そのものについて考えるべきだ」と記されています。これはどういうことを意味しているのでしょうか。

まつくぼ・はじめ/1979年兵庫県生まれ。2003年国際基督教大学卒業。2016年法政大学大学院公共政策研究科修士課程修了。金融機関勤務を経て、2012年7月より原子力資料情報室スタッフ。現在、事務局長。2022年より経済産業省・原子力小委員会委員(撮影:今井康一)

国と東電が福島第一原発の廃炉について定めた「中長期ロードマップ」では、廃止措置の完了時期は原発事故から30~40年後、つまり、遅くとも2051年までとされている。しかし、廃炉終了後の跡地の姿すら明らかにされていない。廃炉の最終的な姿が描けないまま、デブリ取り出し作業の工程だけ立てても意味がない。

そもそも2051年までに廃炉を完了させるという工程自体、現実性を欠いている。これは、事故を起こしていない、通常の原発の廃止措置の年数を参考にしたもので、過酷事故を起こした福島第一原発に当てはめること自体、まったく意味をなさない。つまり、中長期ロードマップそのものを見直すことが先決だ。

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