地域起こし、環境、安心・安全、福祉、教育、女性の活躍など、従前は公的セクターの領域と思われていた社会課題の解決を、民間のビジネスの手法を使って実現しようという動きがあります。「社会起業家」と言われる人たちの活動です。
社会起業家は、事業の目的として社会課題の解決を掲げつつ、ビジネスとしての採算性を意識して、一定の収益を上げる形で事業を実施します。その収益を事業に再投入することで、社会課題解決の活動が持続可能となります。
「ソーシャル×ビジネス」。従前の公的セクターと営利企業の二分論と異なり、両者の中間領域の活動です。その背景には、少子高齢化、地域格差拡大、環境問題の顕在化などで、解決すべき社会課題が多様化、複雑化しており、従前のアプローチのみでは、十分に対応できなくなっていることがあります。また、人口減に伴う税収減や社会福祉経費の増大で、公的セクターの財政的な制約が深刻になっていることも、この新しいアプローチに注目が集まる理由です。
「福祉は公の仕事。民間が口を出すべきでない」とか「企業と公的セクターは目的が違うので協力できない」というのでなく、公的セクターで民間の手法を取り入れる、民間と協働するというアプローチが必要になっています。社会起業家はその役割を果たすプレーヤーと言えます。
「仙人」が地道に続けてきたETIC.の活動
このような社会起業家の活動を支援する先駆的な役割を担っているのがETIC.です。ETIC.は1993年創設のNPOで、70人のスタッフを擁します。学生起業家の全国ネットワーク組織として活動を開始し「自ら社会に働きかけて仕事を生み出していく起業家型のリーダーの育成」に取り組んでいます。
2001年に社会起業家の育成・支援をスタートし、社会起業塾イニシアチブなど多数のプログラムを実施しています。東北復興に向けて人材派遣をする新・みちのく仕事(右腕プログラム)、地域イノベータープログラムなどの地域振興も手がけています。20年間で7000人以上の若者を社会と繋ぎ、起業家400人以上を輩出しています。
代表理事の宮城治男氏は、早稲田大学在学中にETIC.を創設。「仙人」のニックネームを持つもの静かな人ですが、一貫した姿勢で事業を牽引しており、人を巻き込む力がETIC.の活躍の原動力となっています。
「自ら未来を創りだそうというマインドという意味で、「起業家精神」はすべての人が持ちうるものだと思っています。そして、東日本大震災以降確信を強くしましたが、社会や地域の中で自らの役割を創り出し、変革を起こしていこうというアプローチこそが、日本人の起業家精神に火を灯し、創造的に動き出す原動力になると感じています。ETIC.が応援している社会起業家のみなさんは、それを先駆ける、鍵を握った存在になると思っています」と宮城氏。
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