社会起業家、事業の「高速立ち上げ」を目指す 「SUSANOOプロジェクト」とは何か

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SUSANOOの第1期生の田中美咲さんは、公共の防災をよりわかりやすく本質的に変化させ、若者がやりたくなるものにするという「防災ガール」を立ち上げました。全国から集まった20~30代女性とともに、防災イベントの企画、商品プロデュース、研修などを積極展開しています。田中さんは語ります。

「社会課題を解決するソーシャルセクターでも、上場や営利を目的としたビジネスセクターでもないスタートアップへの支援は見つからなかった中で、SUSANOOでは課題解決と市場開拓の両輪をまわすことを学びました。共に歩む仲間ができ、たくさんの機会を得ることができたことがよかったです」

同じく第一期生の三宅紘一郎さんは、伝統産業である日本酒業界と日本酒文化を守り、地域を活性化する目的で、OneTankプロジェクトを立ち上げています。日本各地の酒蔵のタンクを企業がプロデュースできるマッチングサービスや日本酒をベースとした高級スパークリングレモン酒のグローバル展開も狙います。

「SUSANOOを通じて自分達のビジョンが明確になり、Naorai inc.(ナオライ株式会社)として法人化をすることができました。先輩事業家、協力者の方とお会いでき、また他のソーシャル・スタートアップと出会えてよかったです」と三宅さん。

SUSANOOのCo-Founderの孫泰蔵氏は事業への想いを次のように語ります。

「たとえばホームレスの支援や環境保護のように、サービスの対価がもらえないために、ビジネスになりづらい分野のことを『市場の失敗』と呼びます。これまで行政やNGOがこの領域を担ってきましたが、公平性が重要な行政では効率が悪かったり、伝統的な手法では解決できなかったりすることがあります。

そのような領域において、イノベーションを通じて人々の生活と世の中を変えていく起業家が『ソーシャル・スタートアップ』です。彼らの『絶対に実現したい』というアイデアと熱意を、おカネだけでなく、知恵や人脈を使って、皆で一緒に社会を変えていく。これがSUSANOOプロジェクトを立ち上げた僕の想いです」

社会起業家が増えることには意義がある

企業にはいろいろな形があります。競合に打ち勝ち収益を上げる、より多くの顧客を獲得する、社員の幸福を目指す……。目標とするところはさまざまであり、それぞれ意義があります。その中にあって、社会起業家は社会インパクトという尺度で事業を実施するというビジネス。公的セクターと民間の中間領域での社会課題解決を担う新しいプレーヤーとして期待されています。これからの時代、社会起業家の活動がもっと拡大して欲しいと思いますし、できるだけ応援したいと考えています。

石井 芳明 経済産業省 新規事業調整官

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いしい よしあき / Yoshiaki Ishii

経済産業省 経済産業政策局 新規産業室 新規事業調整官。1965年生まれ。1987年、岡山大学法学部法学科卒業。1996年、カリフォルニア大学バークレー校 留学(公共政策 単位履修生)。2000年、青山学院大学大学院国際政治経済学研究科卒業(国際経営学修士)。2012年、早稲田大学大学院商学研究科卒業(商学博士)。1987年、通商産業省(現・経済産業省)入省。中小企業・ベンチャー企業政策、産業技術政策、地域振興政策等に従事。1997年、同省工業技術院国際研究協力課、2000年、中小企業庁経営支援課、2003年、経済産業政策局産業組織課、2006年、中小企業基盤整備機構資金支援課、2007年、同ファンド企画課、2008年、大田区産業経済部産業振興課課長、2011年、地域経済産業グループ地域経済産業政策課を経て、2012年から現職。

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