TBSドラマの「問題演出」は、なぜ起きたのか 裏には「下請構造」と「甘いチェック機能」
私は番組に関する責任者、あるいはかなり力を持った人物、たとえばメインプロデューサーや企画者が考えた“演出”だったのではないかと想像する。だから「大丈夫なのかな」と疑問に感じても、異論を唱えることができなかったのではないか。そうした特殊な状況がなかったのであれば、あまりに不自然だし、あまりにレベルが低い制作者集団ということになってしまう。
今回の問題が生じた背景には、テレビの番組制作における「下請構造」もある、というのが私の見立てだ。過去に発生したテレビのやらせ・捏造事件、たとえば関西テレビの『発掘!あるある大辞典』やフジテレビの『ほこ×たて』などバラエティ番組が起こした不祥事でも、番組制作会社(プロダクション)に丸投げする構図が背景にあるとして問題にされた。放送する際には放送局が責任を持つことはもちろんだが、担当している放送局の社員はごくわずか。実際の制作実務を担っているのは番組制作会社という構図になっている。このことの弊害は大きいのだ。
局の担当者の関与が弱いジャンル
実は今回のTBS『月曜ゴールデン』など、単発2時間ドラマ枠はもっとも番組制作会社による制作が多い放送枠だ。もちろん制作会社のスタッフが作るドラマには高品質なものも数多くあり、制作会社が作ったから質が悪いというつもりはない。だが、こうした2時間ドラマ枠は毎回違う制作会社が作ることが多く、局の担当者の関与が弱くなりがちなジャンルだということは間違いないだろう。
『SP八剱貴志』ではエンドクレジットの最後には「監督 村田忍」と出てくる。テレビドラマの場合、演出した人間を「演出」としたり「ディレクター」としたりすることが多いが、映画制作も行っている会社は「監督」と表示することが多い。この点だけとっても、このドラマの制作現場の責任を負っているのは制作会社だということが明確にわかる。ちなみに村田忍氏はフリーランスの映画監督だ。
また番組の著作権や責任の所在を示す「製作」という最後のクレジットは「オスカープロモーション」と「TBS」の連名である。「オスカープロモーション」は大手の芸能プロダクションで。上戸彩、剛力彩芽、武井咲らの大物タレントを数多く抱えている会社だ。
同社のホームページにも4日からTBSの公式ホームページに掲載されているのと同じ謝罪文が「お知らせ」という形で掲げられている。なお、エンドクレジットに「企画」として登場する古賀誠一氏は、ネットで調べるとオスカープロモーションの代表取締役社長だとわかる。
つまり番組制作はTBSからオスカープロモーションに丸投げされているのだろう。さらに現場を仕切っているのがフリーの映画監督、ということになると、責任の所在がますます曖昧になってしまう。最近のテレビ番組は「吉本興業」や「ジャニーズ事務所」など、大手芸能プロダクションが事実上制作する番組も増えている。テレビ局側は、そうした番組に対してどのような形で関与し、チェックをしているのか。少なくとも、TBSには今回のケースについて調査をして明らかにしてほしいものだ。
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