2012年末にアベノミクス相場が始まってから、高値から10%以上の株価下落は今回で4回目になる。年に1、2回程度はこうした調整は起きるわけだが、2015年は中国への懸念が大きくなり、8月に起きた。日本株の最近の急落は、世界的の市場参加者の心理が悲観方向へ揺いだことでもたらされた側面があり、そうした値動きが年に1回程度起きるという意味では想定されうることだ。
金融緩和の効果を否定するのは無理がある
株価急落が起こると、ここぞとばかり、金融緩和強化を軸に据えてきたアベノミクスに対する批判的な意見が増えてくる。アベノミクスの「3本の矢」戦略が開始された後、最初の株価急落時は2013年5月に起きた。このときにもアベノミクス批判が相当盛り上がったが、今回もあのときとほぼ同様、「金融緩和政策への懐疑論」はなお根強いようだ。
「緩和マネー頼み」で演出された株高が持続しないのは当然であるという立場から、株価急落=日本銀行による異次元緩和に依存したアベノミクスの警鐘、というのが典型的な議論だろう。
だが実際には、日本銀行の金融緩和強化が日本株市場を復活させたことは否定できない。また日本での株高が「緩和マネー頼み」と言い切るのは難しい。
アベノミクス実施以降の日本経済の復調で、法人企業統計ベースの企業の経常利益は2015年4-6月に20兆円に達し、過去最高水準を更新している。2012年末の金融緩和強化によって、経済成長率の高まりとデフレの和ぎが、企業利益拡大を後押ししたためだ。そして、雇用者数が増え、失業者数が大きく減少するなど、実体経済の改善は幅広く起きた。
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