ただ、企業利益はすでにリーマンショック前の水準を大きく上回っているが、株価を日経平均株価ではなくTOPIXでみると、2008年のリーマンショック前の高値に届いていない。
8月中旬まで日本株市場で起きていた株高は、企業の利益改善を反映し実現した側面が大きい。確かに、先行して上昇していた欧州株が調整する中で、日本株が7~8月に高値を維持したのはやや楽観的過ぎたかもしれない。だが、先進国各国との比較でみてもわかるように、日本株市場の予想PER(株価収益率)が他国より飛びぬけて高いかと言えば、そうではない。
もちろん、今後企業利益の急減をもたらす景気失速が起きれば、日経平均2万円は割高だったということになるかもしれない。それゆえ、景気・企業利益の失速を前提にすれば「割高な株価が下がる」という議論は理解できる。ただ、最近蘇っているアベノミクス批判の多くは、「緩和マネーで株高や不動産価格上昇が起きている→この動きは長続きしない」という、表層的な議論にどどまっているようにみえる。
また、アベノミクス批判として同様によく見かける「経済構造の問題が解決しないと株高は続かない」というのも曖昧な議論である。実際には、インフレ率が2%前後のプラス領域で安定していない日本経済であれば、金融緩和強化で総需要が刺激されるので成長率・企業利益はさらに押し上げられる。なので、仮に株安・企業利益減のリスクが高まっているのであれば、「金融緩和をもっと強化すべき」がシンプルなロジックになる。この点からも、株価急落が「アベノミクスへの警鐘」というのは的外れに思える。
批判が急増している今回も、投資のチャンス?
8月末以降の株価急落を伴うマーケットの動揺には、先に挙げた中国経済への懸念に加えて、FRB(米連邦準備制度理事会)が利上げを始める、つまり金融緩和修正が時期尚早であることへの疑念が払しょくされていないことがもう一つの理由に挙げられる(FRBの政策変更が、新興国リスクを高めている側面もある)。
日本経済と比べれば、米国経済は名目成長率が安定して伸びているしデフレに陥るリスクはかなり低い。それでも、金融緩和という必要な薬がなくても、健康体に近づいた米経済は耐えられるかどうか、金融市場がナーバスになっているのが現実である。
いずれにしても、株価が急落するとメディアで増える「アベノミクスへの警鐘」には、納得しがたいものが多い。ただ、これまでの経験則では、こうした声が増える局面が事後的にみれば投資機会だったケースが多かったように思われる。
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