鳥貴族が買収「謎の焼鳥チェーン」人情派な儲け方 赤と黒の看板の「やきとり大吉」は"経営の教科書"だ
楠木建氏の『ストーリーとしての競争戦略』では、「ドライバーに車を売らない買取専門店」という常識破りの手法で中古車業界を制したガリバー・インターナショナル(以下、ガリバー)のFCモデルが「名作」として紹介されている。
ガリバーは長らく、一般客から車を購入はするが、小売販売はしてこなかった。売れずに在庫を抱えるリスクがあるからだ。その代わりに成約率の高い、業者向けの買い取りネットオークションに販売場所を絞ってきた。そうすることで手間を減らし、コスト優位な経営を続けてきたのだ。このビジネスモデルは、ロイヤリティを一定額にする代わりに、管理の手間や人的問題のリスクを減らした大吉と重なる。
焼鳥だからできた、安さと品質保持
大吉のような経営スタイルは、実は、焼鳥だからこそ成立しているそうだ。
というのも、飲食界情報管理センターとして起業した当初は、寿司、焼肉、スナック、お好み焼きなどさまざまな業態を試したという。そのなかで、鶏が最も物価に左右されにくく、全国どこでも品質の良い状態を仕入れやすい材料であり、調理のための設備費も軽かったそうだ。さらに、人件費も安く済み、住宅街の立地で集客できる……など数々の優位性から、最終的に焼鳥一本に絞ったのだ。
この判断は正しく、さまざまなものが値上げされる現在だが、大吉の焼鳥メニューは、今も1本140~200円(税抜)とリーズナブルだ。しかもこの価格は、2024年4月に全メニューの75%を20円値上げした後のものだという。一から店内調理していることを考えれば、十分に安いのではないだろうか。
一体なぜその安さと品質を保持できるのか。最大の理由は、大吉チェーンにはセントラルキッチンがないため、余計な配送費や作業費がかからないことにある。加えて、店主自らが地元の鶏肉店から仕入れ、自分で仕込むことで、調理コストも大幅に落としている。ここにも、大吉を「コスト優位」に導く工夫が行われているのだ。
もちろん、ほかにも安い飲食店はたくさんあるが、大吉ほど味とクオリティを維持しながら値段が安い店はなかなかない。近藤社長は、「新鮮な鶏を自店で仕込んできちんと焼いたら、おいしいに決まってます。冷凍や海外から輸入した鶏とは比較になりません」とにやり。
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