鳥貴族が買収「謎の焼鳥チェーン」人情派な儲け方 赤と黒の看板の「やきとり大吉」は"経営の教科書"だ

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ちょっと安いのでは……と尋ねたところ、創業当初はもっと安い2万円だったそうだ。そこからすぐ3万円に上げ、今はそこに消費税10%の3000円が付いてはいるが、40年間ずっと値上げしていないというから驚く。 

この金額であり続けているのは儲けよりも、「夢を持った人、若者を成功させたい」という創業理念を追求するスキームだから。単純計算して、毎月本部に入るのはロイヤリティ3万3000円✕約500軒で1650万円。その収入で、わずか10人の社員で身の丈にあった運営をしているのだ。 

とはいえ経営者の立場から見ると、もっと儲けがほしいと思って当たり前。近藤社長は以前、創業者の辻氏にロイヤリティの歩合化について質問したことがあるそうだ。 

「ロイヤリティを売り上げに対してパーセンテージにしていくと、本部が全店舗の売り上げを管理せんとあかん。それはものすごく大変やろ」 

「売り上げをごまかすような人も出てきて、本部と店舗の信頼関係もなくなる」 

「それぐらいやったら、なんぼでも売ってくれて儲けてくれたらいい。その代わりに本部に一定の金額を入れてもらう。それが気持ちのいい商売や」 

答えは予想外のものだった。ロイヤリティを一定額にすることは、管理の手間削減や、店主との信頼関係の継続にもつながっていたのだ。 

店主は焼台前で笑顔を絶やさない(写真:ダイキチシステム提供) 

「売り上げを管理しない」というコスト削減 

この考えに賛同した近藤社長は、今新しいチャレンジをしている一部の店舗をのぞき、売り上げを一切管理していない。店舗と本部はオンラインでもつながっていないそうだ。各店の経営はあくまで、店主の自主性に任されている。 

加盟店にPOSシステムを置き、売り上げを管理しようと思えばできるだろう。そのほうが当然、売り上げを上げる施策も打てるに違いない。だが、あえてやらない。「仕組みを知れば知るほど、知り合いや一般の方から『変な会社やね』と言われます。けど、最初からそういう会社なので仕方ありません」と近藤社長は楽しげに話す。 

しかしこの体制は、差別化や競争戦略にもなっているのではないだろうか。 

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