鳥貴族が買収「謎の焼鳥チェーン」人情派な儲け方 赤と黒の看板の「やきとり大吉」は"経営の教科書"だ

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その理由は、店主が店の一番の魅力であり、強みだと据えているからだ。

焼鳥を売っているようで、店主の人柄や店主との会話を売っている。看板はあるけれど、実際は、「店主の魅力で成り立つ個人店」という位置づけなのだ。

店主との会話も大吉の魅力のひとつ(写真:ダイキチシステム提供) 

これを大吉では「生業主義」と名付けている。生業主義のポイントは以下の3点。 

1. 店主自らが仕入れを行い、食材の品質を直接確認する 
2. 店主が毎日焼台に立ち、自らの手で焼鳥を焼き上げる 
3. 接客も店主が中心となり、常連客との関係を築く 

この3点の遵守により、大吉は各店舗に個性を持たせつつ、品質と顧客満足度の高い運営を実現しているのだ。

運営会社ダイキチシステムの近藤隆社長は、生業主義の徹底について、「店は店主とお客様の信頼関係から成り立っている、という飲食店の根本的ルールだと考えています。だから、なんらかの事情で店主が焼台に立てなくなった場合は、店を閉めてもらっています」と説明する。 

飲食店を始めたい人とオーナー志望者をマッチング

大吉が生業主義を取り入れた時期は、1977年の創業時に遡る。当時、ダイキチシステムは「飲食界情報管理センター」という名前だったそうだ。

創業者でカリスマ経営者であった辻成晃氏が、「お金はないけれど情熱を持って飲食店をやりたい人」と「飲食店のオーナーになって、毎月一定額を受け取りたい人」をマッチングする、「店舗銀行システム」(店舗を介して資本を貸借するシステム)としてスタートした組織だったのだ。その根本には、「夢を持った人、若者を成功させたい」という理念があった。 

このため、法人からのFC加盟の申し出はすべて断ってきた。店舗が100店を超えて注目される時期になると、「1億円出すから10店舗作ってくれ」という声もあったそうだが、例外なく断ったという。

しかも驚くことに、飲食店チェーンとして法人登録をしたのは平成に入ってからだそうだ。それまでは、情報産業系の企業として登録されていたのだとか。一般的な飲食店経営企業とは、一線を画すスタンスだということがよく分かる。 

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