大失敗をした社員には「大失敗賞」を与えよう 怒らず表彰すると職場の雰囲気は明るくなる

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さらに月間賞として、朝最初にシャッターを開けたり職場にお花を飾るなど、目立たないけれども皆のために努力している人を表彰する、「縁の下の力持ち賞」というユニークな賞もあります。これらはいかにもチームワークを重んじる社長さんらしい発想です。

もちろん、業績に貢献した「社長賞」、「優秀賞」といった普通の表彰もあります。先程の「大失敗賞」から派生して「中、小失敗賞」もできました。金額は5000円から5万円まで。因みに「大失敗賞」の副賞は2万円だそうです。

失敗は成功のもと、とよく言います。でも実際は、失敗したら怒られます。左遷されます。でもこの会社では、失敗によって得た色々な技術やノウハウで、新しい製品ができているんです。社長さんは次のように言います。

ヒット商品「スライド式昇降機」

「失敗するぐらいのチャレンジ精神が無いとダメなんです。何もしないより、失敗せなあかんねん」

高級システムキッチンによく見られるスライド式昇降棚は、実はこちらが数多く作っています。この製品の製造責任者も、金型製造で300万円の損失を出し、「大失敗賞」を受賞した社員さんでしたが、受賞後に、この昇降機棚の責任者に指名されました。

今度は失敗できない、という覚悟から、油圧式部品に改良を重ね、4万回の耐久試験にパスした製品を作り出しました。今では、マーケットシェアで7割を占める大ヒット商品になり、会社の業績の6割を稼ぐ大黒柱に育ちました。

幹部社員はみな「失敗大賞」受賞者

失敗しても怒られない。逆にチャレンジ精神を評価してくれる。幹部社員は全員この「失敗大賞」を受賞しているそうです。失敗した後その原因を考え、リベンジしようと努力した結果です。失敗したら表彰するという逆転の発想が、社員の自由な発想を産み、楽しい職場づくりにも役立っているんです。最後に城岡社長が笑いながらこういいました。

「実は私も『大失敗賞』をもらってますねん」

実は、社長自身も「大失敗賞」をもらっている

チャレンジ精神が無い中小企業は生き残れない。その覚悟を会長自ら、身を持って示してるんです。「大失敗賞」ができて20年。その間に、売り上げは10億円から55億円にまで増えました。城岡社長の望んだチャレンジ精神が、社員に浸透した結果だと思います。

おまけです。この「大失敗賞」、実は誰にでもあげるという訳ではありません。と言っても、表彰に差別をしているのではありません。皆の前で失敗を披露されると、凹んでしまう社員さんもいるからです。そういう細やかな配慮が、一見豪放磊落な社長の笑顔の陰に隠れています。明るく楽しい会社にするには、そうした心遣いもまた必要なんです。

竹原 信夫 日本一明るい経済新聞 編集長

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たけはら のぶお / Nobuo Takehara

有限会社産業情報化新聞社代表取締役(日本一明るい経済新聞編集長)。1971年3月、関西大学社会学部マスコミ学科卒、同年4月にフジサンケイグループの日本工業新聞社に入社。その後、大阪で中小企業担当、浜松支局記者などを経て、大阪で繊維、鉄鋼、化学、財界、金融などを担当。1990年4月大阪経済部次長(デスク)、1997年2月から2000年10月末まで大阪経済部長。2001年1月に独立、産業情報化新聞社代表に。年間約500人の中小企業経営者に取材、月刊紙・日本一明るい経済新聞を発行している。
 

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