チョーヤ、あまりに常識外れだった「3つの変革」 完熟梅での仕入れ、柔軟な出荷時間…あと1つは?
さらにチョーヤは、出荷形態も変えている。ネット収穫した梅を選別し、コンテナのままの入荷をOKとしたのだ。また、大きさの仕分けも簡素化し、通常4~5種類に分けるところを、3種類にした。ただし、完熟梅は傷みやすいため、通常の出荷では行わない1次洗浄を行うことを条件としている。そして、漬け込み直前にチョーヤで2次洗浄を行う。
加えてチョーヤは、出荷時間も変えた。青梅は、午前中に処理して午後13時、14時頃に農協に出荷がするのが基本だが、チョーヤの工場では早朝や夕方、夜間の入荷も受け付けている。このため、農家から農協への出荷が、夕方まで可能となる場合もある。そうすることで農家の時間の余裕を生み出しているのだ。
これら出荷体制の変更は約20年前、2003年頃からスタートしたそうだ。きっかけは1990年代の終わり頃、梅の出荷時期が遅く、有利な価格で販売がしにくいエリアの農家と、出荷時期を変えて取引をはじめたことにあったという。また、「青梅での出荷タイミングを逃して完熟した梅を引き取ってほしい」という声もあったそうだ。
「現在では農家の高齢化対策や、持続可能な農業のための省力化の取り組みにもつながっており、農家のみなさんに喜んでいただいています」と金銅氏は話す。
3.安心安全を届けるため、栽培から変えた
チョーヤは梅の栽培も変えた。前編で、チョーヤが和歌山県の農協を通じて農家と取引していると紹介したが、その理由の1つに安全性がある。和歌山県の農協は、農薬使用などの記録を農家から集めて把握しており、農薬を分析するシステムも持っている。つまり、農薬の量や種類をコントロールできており、万一何かあった際にはトレースも可能な梅を使っているのだ。
そして、チョーヤの安心・安全への追求はそれだけにとどまらない。農家と共に減農薬、有機栽培にも取り組んでいる。
減農薬については1997年、「除草剤を使わず草を刈り取り、基準である農薬散布の回数と量を半分に」をスローガンにスタート。当時はまだ農薬の安全性への注目度は低かったそうだが、今はそれが広まり、他府県の農家も取り組むようになった。次のステップとして、有機栽培を始めたのは1999年のことだ。農家とグループを結成し、土作りや育成方法の研究にも取り組んでおり、この考えに賛同する農家は年々増えていっている。
そして、これらの取り組みの際にチョーヤが注意しているのが、農家に一方的な指示をしないことだそうだ。あくまで協力して行うことで、その結果は農家の知識となり、強みとなる。他方、チョーヤとしても、日本ではじめてJONA(特定非営利活動法人日本オーガニック&ナチュラルフーズ協会)有機認証を取得した梅酒『The CHOYA 大地の梅』を発売するなど、目に見える成果を得ている。ここでも、ウィンウィンの関係が構築されているのだ。
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