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「インド発沖縄育ち」ベンチャーが世界の農家救う 吸水性ポリマーで水不足に悩む農民の力に

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「すごいベンチャー100」2023年最新版から注目の7社をピックアップ。「ESG」領域からは、水不足に悩む農家を救う吸水性ポリマーを開発する「EF Polymer」を拡大記事で紹介する。

ナラヤンCEO(右)と下地COO(左)。ナラヤン氏は大学で農業工学を専攻。2018年にインドで現在のイーエフポリマーの前身となる企業を設立した(写真:EF Polymer)

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9月11日発売の『週刊東洋経済』9月16日・23日合併号では、「すごいベンチャー100 2023年最新版」を特集(アマゾンの購入ページはこちら)。注目の100社(2023年最新版・全リストはこちら 9月8日15時公開予定)の総力取材記事に加え、10年後の日本を占ううえで欠かせない「スタートアップ市場の最新トピックス」を網羅する。

※この記事は9月16日5:00まで無料会員登録でお読みいただけます。それ以降は有料会員向けとなります。

世界の農業の「水問題」を解決できるか。沖縄県に本社を置く、EF Polymer(イーエフポリマー)が注目を集めている。

2020年に同社は100%オーガニックな材料由来の吸水性ポリマー「EFポリマー」の開発に成功した。EFポリマーは自重の約100倍の水を吸水でき、節水に有効だ。この3年で国内外1万2000軒の農家に供給した。

吸水性ポリマーは高い水分保持力があり、おむつや保冷剤などにも使われている。これを農業の水不足問題の対策に活用できないかとの期待は以前からあった。

農業・食品産業技術総合研究機構が2019年に公表した研究成果によると、1983年から2009年までの間にトウモロコシやコメ、大豆、小麦の干ばつ被害は1660億ドル(24兆1425億円)にも及ぶ。干ばつは世界各地で起こっており、農民にとって生活が懸かった問題だ。

父からの一言が開発のきっかけに

だが、これまであるような吸水性ポリマーでは農業への活用は難しい。農作物に十分に水を行きわたらせることができても、石油由来の製品であるため、自然分解がなされず地中に残り続けてしまう。これでは別の環境問題をつくりかねない。

地中で完全分解する吸水性ポリマーをつくることはできないのか。インド北西部の小さな農村で育ったナラヤン・ラル・ガルジャールCEO(最高経営責任者)はそんな夢を抱いた。干ばつで思うように作物が育たず、困り果てた様子の農家はごくありふれた光景だった。

元々、ナラヤン氏は科学に親しみ、実験が大好きだった。実験に熱中するナラヤン氏を見て、父が「そんなに科学が好きなら、干ばつに悩む農家を救う方法を考えてみたら」と。この一言がEFポリマーの開発にのめり込むきっかけとなった。

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