有料会員限定

スタートアップ「VCファンド満期問題」と出口戦略 2024年はM&Aの考え方が大きく変わる1年になる

✎ 1〜 ✎ 133 ✎ 134 ✎ 135 ✎ 136
拡大
縮小

2013年以降に立ち上がったVCファンドが、10年の満期を迎えようとしている。そんな中、スタートアップの出口戦略に影響が出ている。

2024年はスタートアップの「出口戦略」の大きなターニングポイントになるかもしれない (写真:ELUTAS/PIXTA)

特集「すごいベンチャー100 2023年版」の他の記事を読む

「持分譲渡」についてご相談させてください――。そんなベンチャーキャピタル(VC)からの相談が次々と寄せられている。

M&Aクラウドでは、この2023年10月末に「VCファンド満期ご相談窓口」というものを開設した。VCの組成したファンドには償還期限があり、その満期が近づいているファンドやそこから出資を受けているスタートアップが増えているのではないかと考えたからだ。

すると、それを知ったVC担当者や、スタートアップ経営者から、冒頭のような問い合わせが相次いだ。持分譲渡とは、出資して保有している分の株式を譲渡、売却すること。これまでもさまざまな窓口を設けていたが、この悩みに直面した人々の切実さは、想定を上回るものだった。

いったいスタートアップに何が起きているのか?

週刊東洋経済 2023年9/16・23合併特大号(すごいベンチャー100 2023年最新版)[雑誌]
『週刊東洋経済 2023年9/16・23合併特大号(すごいベンチャー100 2023年最新版)』。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

この「VCファンド満期問題」という大波について詳述する前に、2023年のスタートアップのM&A(企業の合併・買収)の状況について振り返っていきたい。

2023年はスタートアップのM&Aに対して、国からの追い風が吹いた年だった。2023年度の税制改正により、4月から「オープンイノベーション促進税制」の対象にM&A型の投資も加わったからだ。

簡単に言うと、一定規模以上(株式取得額5億円以上)のスタートアップをM&Aした企業は、株式取得額の25%相当の所得控除を受けられるようになった。M&A後に買収先の企業が満たすべき「成長要件」のレベルが高いという課題はあるにせよ、国が「スタートアップのM&Aを推奨している」というメッセージを発したことになる。

ダウンラウンドIPO、MBO…揺らぐ上場の意義

スタートアップにとって、イグジット(出口)の選択肢と言えばこれまでIPO(新規株式公開)一辺倒だった。海外では一般的な「M&Aによるイグジット」を日本のスタートアップがあまり選択したがらない背景には、日本ではM&Aに比べIPOのほうが、株価が高くなりやすいことや、「上場経営者」という肩書を目指す風潮が強いことがあった。

関連記事
トピックボードAD
連載一覧
連載一覧はこちら
トレンドライブラリーAD
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
特集インデックス
すごいベンチャー100 2023年版
掲載700社のうち46社が上場、現在の時価総額は?
UTEC・郷治CEOが唱えるスタートアップの意識変革
レイターステージに特化、狙うのは大型IPO
生成AIはエンタメにも未知の大変化をもたらす
吸水性ポリマーで水不足に悩む農民の力に
ソフトを駆使した「在庫戦略」で経営改善に道筋
顧客に寄り添った支援が現場のDXを進める要
独自の機械で「おいしく長持ち」パウダーに加工
世界39カ国で展開、中国では政府の後押し得る
「退職者は裏切り者」の思考がもったいない理由
「すごいベンチャー100」2023年最新版・全リスト
イノベーション起こす未来のユニコーンはここだ
次の30年、日本が「ものづくり」で勝つための策
「AIチャットくん」を開発
AIシステムを自動で検証
誰でも手軽に気球で宇宙遊覧
自然由来の吸水ポリマー開発
画像生成の「学習素材」提供
接客に特化したAIチャット
映像生成AIアプリを開発
パーソナルAIの開発
企業の生成AI導入を支援
開発自動化プラットフォーム
バグバウンティ事業展開
生成AIのリスク管理を支援
ゲノム医療特化の半導体開発
脱炭素にも沿う空のスマナビ
小型衛星用の水エンジン開発
衛星打ち上げが軸の宇宙商社
風力発電のデータ収集や解析
電力の取引市場を創設
有機でも収穫増やせる新技術
東大発の海洋研究ベンチャー
超小型海水淡水化装置を開発
排出量削減をクレジット化
放棄された森林に植林
「生成AI」や「ESG」でスタートアップがつかむ商機
ZEALS、岩谷技研、レラテック…注目業界の23社
適正在庫を算出し経営支援
核融合商用炉の実現に挑む
においで排泄を検知
無線給電のシステムを開発
EV充電コントローラを販売
「移動のシェアサービス」展開
コレクタブルカーの共同所有
船舶管理SaaSを展開
建機の遠隔操作・自動運転
特殊な中間膜で性能を向上
世界最小級の箱詰めロボ
MRAMの設計、試作受託
大型3Dプリンターの開発
人の代わりに働くロボット
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT
有料法人プランのご案内