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スタートアップ「VCファンド満期問題」と出口戦略 2024年はM&Aの考え方が大きく変わる1年になる

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2013年以降に立ち上がったVCファンドが、10年の満期を迎えようとしている。そんな中、スタートアップの出口戦略に影響が出ている。

2024年はスタートアップの「出口戦略」の大きなターニングポイントになるかもしれない (写真:ELUTAS/PIXTA)

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「持分譲渡」についてご相談させてください――。そんなベンチャーキャピタル(VC)からの相談が次々と寄せられている。

M&Aクラウドでは、この2023年10月末に「VCファンド満期ご相談窓口」というものを開設した。VCの組成したファンドには償還期限があり、その満期が近づいているファンドやそこから出資を受けているスタートアップが増えているのではないかと考えたからだ。

すると、それを知ったVC担当者や、スタートアップ経営者から、冒頭のような問い合わせが相次いだ。持分譲渡とは、出資して保有している分の株式を譲渡、売却すること。これまでもさまざまな窓口を設けていたが、この悩みに直面した人々の切実さは、想定を上回るものだった。

いったいスタートアップに何が起きているのか?

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この「VCファンド満期問題」という大波について詳述する前に、2023年のスタートアップのM&A(企業の合併・買収)の状況について振り返っていきたい。

2023年はスタートアップのM&Aに対して、国からの追い風が吹いた年だった。2023年度の税制改正により、4月から「オープンイノベーション促進税制」の対象にM&A型の投資も加わったからだ。

簡単に言うと、一定規模以上(株式取得額5億円以上)のスタートアップをM&Aした企業は、株式取得額の25%相当の所得控除を受けられるようになった。M&A後に買収先の企業が満たすべき「成長要件」のレベルが高いという課題はあるにせよ、国が「スタートアップのM&Aを推奨している」というメッセージを発したことになる。

ダウンラウンドIPO、MBO…揺らぐ上場の意義

スタートアップにとって、イグジット(出口)の選択肢と言えばこれまでIPO(新規株式公開)一辺倒だった。海外では一般的な「M&Aによるイグジット」を日本のスタートアップがあまり選択したがらない背景には、日本ではM&Aに比べIPOのほうが、株価が高くなりやすいことや、「上場経営者」という肩書を目指す風潮が強いことがあった。

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