ゲーム世界の「褒め方」は極めて合理的だった 仕事人にも役立つ「リアクションの本質」

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例えば、新人研修において、何か複雑な作業の流れを把握させたい場合は、ゲーム形式にするとうまくいくことがあります。その仕事の流れを、いくつものステップに分解して、ひとつのステップをひとつのチャレンジゲームとして作ります。そしてゲームの進行時には、ゲームのプレイヤー(社員)に適切な「質」「量」「タイミング」で「ポジティブなリアクション」を多めに伝えるのです。

心理学の観点からも有効

実際の大規模なゲームの開発では「フォーカステスト」というものを行い、プレイヤーの表情をビデオに撮って観察しながら、興奮したり笑顔が増えたりするポイントを確かめています。ここで重要なのは、「人を褒める」のではなく「そのアクションを褒める」ことに集中することです。すると、多くのプレイヤーは、正しいアクションを取りたがるようになります。

これを、何ステップも重ねて、最終的に教えたい仕事の流れとして作りあげると、最終的に参加者は「正しいアクションとは何か?」ということについて深く考えるようになります。

これは、心理学の「スモールステップの原理」によく似ています。

「スモールステップの原理」は、アメリカの心理学者バラス・スキナーによって提唱されたものです。

スキナーは「プログラム学習」と呼ばれる学習法を考案しました。これは、「オペラント条件付け」と呼ばれる原理を応用したもので、学習のステップを小刻みに設定し(スモールステップの原理)、学習者が積極的であるか(積極的反応の原理)、学習者がステップごとに正しい理解ができたかを、その場その瞬間で判断してフィードバックします(即時確認の原理)。また、学習者のペースに合わせて指導します(学習自己ペースの原理)。

ゲームでは、プレイヤーにゲームのルールを教えるとき、この「スモールステップの原理」を最大限にするために「リアクション」を重視してます。ビジネスにおいても応用できる場所は、いろいろとあると思うので、ぜひ覚えてみてください。

大野 功二 ゲームプランナー

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おおの こうじ

フリーのゲームプランナー、開発プロジェクトコンサルタント。その他にも、フリープログラマー、フリーライター業などを掛け持つ。PCゲームやPlayStation 3、Nintendo Wiiなどのコンシューマーゲームにおいて、オリジナルゲーム作品から、有名アニメおよびスポーツ版権タイトルのゲーム制作まで多数参加。現在は、Unity Technologies Japanにてインディーゲームのポーティングディレクター、QAマネジャーとして担当している。また、研究開発にも力をいれており、その成果として日本最大のゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC」に参加。2008年の「ニューラルネットワークとゲームAI」を皮切りに2010 年まで講師として活躍している。2015年には著書『3Dゲームをおもしろくする技術』がCEDEC AWARD 2015 著述賞を受賞。

著書には『3Dゲームをおもしろくする技術』『Unityではじめる2Dゲーム作り徹底ガイド』『2Dゲームをおもしろくする技術 スタートダッシュ編』などがある。また、ゲーム開発だけでなく、ゲーム技術を用いたデジタルサイネージおよびデジタルアートへの応用研究開発、VR・AR・MR研究など、活動の幅を広げている。

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