ゲーム世界の「褒め方」は極めて合理的だった 仕事人にも役立つ「リアクションの本質」

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何をあたりまえのことをと思われるかもしれませんが、ゲームを作るプロは、このリアクションを非常に慎重に丁寧に考えて作ります。それは、リアクションの作り方で、そのゲームから感じられる体験が大きく変わってしまうからです。

リアクションはここまで考えられている

先ほどの剣を使って敵を倒すゲームであれば、斬られたときのよろめきの大きさで、ダメージの大きさをプレイヤーに伝えることができます。小さくよろめけば小ダメージですし、大きくよろければ大ダメージです。

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また、よろめく方向もリアクションとして作れば、どんな早い剣さばきの攻撃でも、右から斬られたのか左から斬られたのかわかります。さらに、斬られたときに、敵が「ギャー」などの叫び声をあげれば弱い人間味を出せますし、逆に「ぐっ、まだだ!」などのセリフを言わせれば、強い意志をもった敵としてプレイヤーに認識させることができます。

また、ゲームのリアクションは、敵のリアクションだけではありません。現在のゲームでは、グラフィック表示能力が高性能になったおかげで、プレイヤーキャラの体力が少ないときには、プレイヤーキャラに疲れた歩きをさせたりダメージを受けて走れない歩きをさせたりといった表現が可能になりました。

このようなリアクションによって、プレイヤーはプレイヤーキャラの苦しさを自分のことのように受け取り感情移入します。ゲームへの没入感が大きくなるのです。このような演出方法を「コンテキストムーブ」と呼んでいます。

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大野氏の著書『3Dゲームをおもしろくする技術』より抜粋

 

ゲームのリアクションは、さらに工夫すれば、ゲームの中の世界観を表現することもできます。図の状況でプレイヤーキャラの周囲に街人(まちびと)がいる場合、その街人の反応で、ゲームの世界観が決まります。

もし、やさしい世界観を表現するなら、傷付いたプレイヤーが街人に近づいたら水をあげるようにプログラムします。逆に、厳しい世界を表現するのであれば、傷付いたプレイヤーが近寄ろうとすると、街人が逃げていくようにします。

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