①受験生の注意力を判断している
「ひらがな」で書くよう指定しているにもかかわらず、漢字で書いた受験生は不注意だ。医療現場においては、どんなミスも重大な事態に繋がりかねない。つまり、医師に必要な注意力を欠いているという点で、漢字で書いてしまった解答は減点されるべき、という意図があるのではないか。
②漢字で書かせると誤字が多過ぎて、採点者が根負けしてしまった
この大学の入試問題を数年分さかのぼると、むしろ「ちょうやくでんどう(跳躍伝導)」や「そうへんい(相変異)」などを漢字で書くよう指定している問題に出くわす。その解答を見てきた採点者が、あまりに誤字や奇妙な字が多いために根負けしたり、試験として成立しないと判断した可能性はあるのではないか。
③ひらがなを書く(読みを答える)のが苦手な若者が増えている
最近は漢字もひらがなも書かず、ノートなどにもカタカナで走り書きしている学生が目立つようになった。また、難しい漢字について、きちんと読みを確認せず勉強を進めているケースもある。そのような状況に注意喚起をしたい、という意図かあるのではないか。
「ひらがながスッと出てこない」?
ほかにもいろいろな可能性が考えられるが、この3つで言えば、③はかなり突飛な推論に思える。が、そうでもないかもしれない。
というのも、私が指導する夏期集中講座に参加している女子学生に、「なぜこんな奇妙は問題が出題されているのだと思う?」と尋ねたところ、意外な答えが返ってきたからだ。
彼女いわく、「私はこの試験の意図が何となく分かります。私は漢字よりも、ひらがなのほうが苦手ですから。スマホをいじっていても、実のところ漢字は何とかなるのです。いちばん困るのはひらがなです。特に『み』『ん』や、小文字(小さい『ゃゅょ』など)が苦手で……。私は時々、ひらがながスッと出てこない時があります」とのこと。
これには思わず「エーッ!」と叫んでしまった。
そういえば法科大学院で新司法試験の論文指導をしていた際、ある優秀な学生から「先生、これを次回の講義で、ぜひ」とメモを渡されたことがあったが、それを見て驚いた。そのメモには、「イホーとセキニンの違いについて次回の講座で詳しく説明してください」とあったのだ。
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