先週に引き続き、作家の石田衣良さんとの対談講演「知層をつくろう~新しい生き方・ことばの力~」(9月25日・於全電通労働会館)から、興味深い内容を紹介することにしよう。
このイベントでは、学生など若者を壇上に迎え、この不確かな時代におけるさまざまな思いを語ってもらった。その思いに石田さんと私が応える形で、独特の対話が進行したのである。
たとえば人間関係について。
高校時代は部活に専念していた。そこでは部員が一体となって、何事かを成し遂げるという充実感があり、確かな人間関係があった。だが、大学に入ったら表面的な人間関係ばかりで、ぜんぜん充実した感じがしない。多様化する社会では人間関係が重要だというのに、このままでは不安だ──。
確かに人間関係は重要である。だが、ここでいう人間関係とは、「わかりあえない」同士でも、社会における共通の問題を解決する(あるいは共通の目標を達成する)ために協働する、「対話的な人間関係」のことを意味する。
協働するためには、互いの利害を調整しつつ、手を結べるところは結び、結べないところは結ばないまま留保しておく必要がある。要するに、「仲良しの友達関係」とは根本的に異なるということ。
その意味では高校時代の人間関係のほうが、対話的であったといえるだろう。部員が一体となるまでには、さまざまな価値観の衝突や利害の調整があったのではないか。気の合わない部員とも手をつなげるところではつなぐことによって、共通の目標を目指したのではないか。
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