対話の現場/指導者か対話者か 対話の現実と限界

対話の現場/指導者か対話者か 対話の現実と限界

北川達夫 日本教育大学院大学客員教授

9月に就任した野田佳彦首相は、少なくとも現時点では低姿勢を貫いている。与野党協議と党内融和を重視しているためか、その態度は至って対話的である。ただ、その反面、強力なリーダーシップはあまり感じられない。

一般論として、指導者としての資質と対話者としての資質は、最終的には両立しないものである。突き詰めていえば、指導者は一人ですべてを決定するのであり、対話者は一人では何も決定しないからだ。

今ファシリテーター型リーダーが求められているという。対話的な指導者といったところか。それは理論的には可能であるし、現実にも存在するのだろう。だが、チームのレベルならばともかく、国家や企業など、大きな組織においても現実問題として可能なのだろうか?

「対話に値する相手」になるための能力と要件

北欧の造船王マルティン・サーリカンガスは、コミュニケーションを重視した経営者として知られる。ただ、彼については、「対話者」として称賛する声と、「独裁者」として畏怖する声があった。これはどういうことなのだろうか?

1990年代、サーリカンガスの創業した造船大手マサヤーズ社(現アケルフィンヤーズ社)は、日本の豪華客船やLNG(液化天然ガス)タンカーの建造を数多く手掛けた。その関連で私は、この造船王とコミュニケーションについて論じる機会を得た。内容を簡単に紹介しよう。

造船王は語る。

「コミュニケーションで最も重要なのは、『コミュニケーションが成立している』と勘違いしないことだ。相手は信じられないほど『何もわかっていない』のである」
 コミュニケーションがどの程度成立しているか? それを確認するには、「何」のレベルと「なぜ」のレベルで考えるとよいという。

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