対話の現場/自分と他者の人物評価、一方的決め付けの構造

対話の現場/自分と他者の人物評価、一方的決め付けの構造

北川達夫 日本教育大学院大学客員教授

このところ、記者会見をいとう首相が続いている。菅首相についても、「自分の都合のよいときにしか、会見しようとしない」と、報道記者の間では評判が悪い。

この姿勢を批判するのは簡単だ。一国の宰相たるもの、会見に応じるのは当然の義務ではないか。未曾有の国難に際して、もっと国民に語りかけるべきではないか。

表現という観点からすると、会見をいとうのはわからないでもない。

不特定多数の人々に向かって語りかけるのは、本質的にリスキーな行為である。自分の発した言葉が、どのように解釈され、評価されるのか。自分ではコントロールできないからだ。失言や暴言となれば、政治生命を脅かしかねない。

それにもかかわらず、政治家に失言や暴言が多いのは不思議である。前に「女性は子どもを産む機械」と発言した厚生労働大臣がいた。こういう発言を聞くと、その政治家の政治生命のみならず、全人格を否定したくなる人もいることだろう。

ただ、発言の評価は、知識・経験・価値観に依存する部分が大きいので注意を要する。ちょっと前に仙谷官房長官(当時)は、国会において自衛隊を「暴力装置」と表現し、ごうごうたる非難を浴びた。マックス・ウェーバーの言葉を引用しただけだと思うのだが、あまりにもインパクトが強すぎたのだろう。

今回は、政治家など公人の発言、それを受け止める世間の態度から、対話について考えてみよう。

全人格を決め付ける「誤解」と「ひいき目」

政治家の発言が騒動を巻き起こすたびに、私は「印象形成」という言葉を思い出す。印象形成とは、特定の人物について、ごく限られた情報を手掛かりにして、その全人格を決め付けてしまうことである。

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