対話の現場/予想外の反応の価値 対話が成立する要件

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対話の現場/予想外の反応の価値 対話が成立する要件

北川達夫 日本教育大学院大学客員教授

ありがとう! 飛行機の機内で、乗客の韓国人男性が、客室乗務員に声をかけた。客室乗務員は立ち止まってほほ笑み、軽く会釈をして通り過ぎた。

ありがとう! 韓国人男性は、別の客室乗務員に向かって手を振りながら、声をかけた。その客室乗務員も、韓国人男性に対してほほ笑みながら、軽く会釈を返した──。

「ごきげんよう」(フジテレビ系列・7月22日放映)というトーク番組で、韓国の音楽グループ「超新星」が語ったエピソードである。日本に向かう機内で、メンバーの一人が日本人客室乗務員に何かを頼もうとしたのに、どうしても相手にしてもらえなかったとのこと。

このメンバーは日本語が不得意だった。日本語の得意なメンバーから、客室乗務員に声をかけるときは、「すみません」と言うとよい、と教えてもらっていた。ところが、いつの間にか「すみません」を「ありがとう」と取り違え、客室乗務員に「ありがとう!」と声をかけ続けていたというのである。

気が利かない--と、客室乗務員の対応を非難するのは簡単だ。しかし、わが身に置き換えて考えると、唐突に「ありがとう」と言われたら、ほほ笑んで会釈するしかないような気もする。感謝の意を表明している(としか思えない)相手に、その意図を問いただすのは難しい。

これは、対話の成立について考えるうえで、面白い事例である。

あらゆるコミュニケーションは、一方が呼びかけ、もう一方がそれに応えることによって始まる。

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