対話の現場/「普通」とは何か? 対話的活用法と排除法

対話の現場/「普通」とは何か? 対話的活用法と排除法

北川達夫 日本教育大学院大学客員教授

サッカー日本女子代表「なでしこジャパン」が、ワールドカップで優勝した。私は特にサッカーに興味・関心があるわけではないが、こういうことは喜ばしく、また誇らしく感じるものだ。そういう人は多いのではないか──。

このような文章は、「多くの人が同意するであろう」という憶測で書いている。同意はしないが、反論するほどでもない、という人の存在も見越して書いている。そういった人々が多数派だろう、ということ。要するに、私の考える「普通」の人々を想定しているのだ。

一連の試合における選手たちの姿勢、そして優勝後の会見における言葉も印象的であった。最後まであきらめてはいけない。あきらめずに頑張れば、夢に近づくことができるのだ、と元気づけられた人も多いのではないか。そういえば、菅直人首相も、代表選手が凱旋帰国した後の衆議院予算委員会で、「私もやるべきことがあるかぎりは、あきらめないで頑張りたい」と言っていた──。

このあたりになると、「普通」の想定も微妙なものとなる。菅首相という「有名人の事例」(やや皮肉な事例ではあるが)を引いてきたのも、この微妙さによるものだ。

確かに、あきらめずに頑張ることは大切である。頑張ることなく、早々にあきらめているようでは、夢のかなえようもないからだ。正論といえば、正論といえよう。

だが、現実は厳しい。誰もが夢を追い続け、頑張り続けられるわけではない。自律的に頑張れる状況になく、他律的に頑張ることを強要され、そこには夢も何もないような場合もある。何をやってもうまくいかず、あきらめることによって自分を守るしかない人にしてみれば、「頑張っている人」を見るだけでゲンナリしてしまう。これを「ダメなやつだ」と突き放すのは簡単だ。だが、こういった「弱さの可能性」は誰もが秘めているのではないか。

キャリア・教育の人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • ゴルフとおカネの切っても切れない関係
  • 360°カメラで巡る東京23区の名建築
  • ブックス・レビュー
  • 競馬好きエコノミストの市場深読み劇場
トレンドライブラリーAD
  • コメント
  • facebook
0/400

コメント投稿に関する規則(ガイドライン)を遵守し、内容に責任をもってご投稿ください。

アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
好業績の裏で検査不正<br>スズキ「鈴木修経営」の光と影

5月10日の決算会見に登壇し完成検査の不正を詫びたスズキの鈴木修会長。不正は組織的・構造的な問題か、現場への目配り不足によるのか。長年にわたるカリスマ経営の副作用を指摘せざるをえない同社のガバナンス体制を詳解する。