対話の現場/自分と他者の人物評価、一方的決め付けの構造


 そんなこと、どうでもいいじゃないか、と思われるかもしれない。実際のところ、メディアが政治家の発言を取りざたする場合、内容も形式もない交ぜにして評価することのほうが多いのである。

だが、世の中には、とても受け入れられないほど乱暴な口調で傾聴に値する内容のことを言う人がいる。その一方で、誰にでも受け入れられるような優しい口調で、とんでもないことを言い出す人もいるのだ。

コミュニケーションにおいては、形式が意外なほど重要である。発言の内容を聴く前に、形式で拒絶してしまうことが多いからだ。

「言っていることはわかるけど、そんな言い方をしなくたっていいじゃないか」という具合に。

私個人としては、このような自分の気持ちに配慮を求める発想も「甘え」に感じられて、あまり好きではない。とはいえ、これが現実であろう。内容がどれほどよくても、「命令口調で言われたから、受け入れられない」「あの人が言っているから、納得できない」と、拒絶されてしまうのである(後者は「根本的要因の錯誤」でもあるが)。

最近、首相を筆頭に政治家の発言は、内容以前に形式で拒絶されていることが多いように思う。これは、政治家の「言葉の力」と「人徳」のなさによるものか。


北川達夫(きたがわ・たつお) 
日本教育大学院大学客員教授■1966年生まれ。早大法学部卒、外務省入省。在フィンランド大使館に8年間勤務し退官。英、仏、中国、フィンランド、スウェーデン、エストニア語に堪能。日本やフィンランドなど各国の教科書制作に携わる。近著は『不都合な相手と話す技術』(小社刊)。(写真:吉野純治)


(週刊東洋経済2011年7月30日号)
※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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