「日本車の牙城」タイで中国車バカ売れの実際 販売店も中国EVにシフトし始めた
アメリカやEUに比べれば小さいが、タイはそれでも東南アジアでは最大の市場だ。「アジアのデトロイト」として知られるタイは、同地域の自動車生産の重要拠点。中国に近く、貿易でも強い結びつきがあるため、中国車が迅速かつ安価に輸入される場所ともなっている。
「タイは足がかりとなる市場だ」と、コンサルティング会社シノ・オート・インサイツでマネージングディレクターを務めるツー・レは言う。「価格帯が低いため、多くの中国ブランドに適している」。
「日本車の牙城」が早くも陥落
かつて日本の牙城と見なされていたこの市場では、すでに盟主の交代が起こりつつある。2022年の新車販売台数に占める日本車ブランドの割合は86%だったが、昨年は75%に低下し、中国のBYD、長城汽車、上海汽車(SAIC)が大きな市場シェアを獲得した。
2021年にタイ政府は、2030年までにタイで生産される自動車の30%をEVにする方針を掲げたものの、そうした野心的な目標は中国企業なしには達成不可能とみられる。タイ政府はさらに、EV需要を喚起するために補助金や減税などの措置も講じている。
タイ経済の低迷は、今年の自動車販売台数が全体として大きく減少する一因となっている。EVの販売も大幅に減速したが、それでも前年比で50%増加している。
中国の自動車メーカーは価格の引き下げで対応しており、競合する企業からは値下げがエスカレートして「底辺への競争」になることを懸念する声が上がるようになっている。
長城汽車でタイ部門のゼネラルマネージャーを務めるチョン・バオユーは、全面的な価格競争になれば「業界を殺す」ことになるだろうと述べた。顧客がさらなる値下げを期待して、車の購入を先延ばしするようになるからだ。
「値下げは短期的な解決策であって、長期的な解決策ではない」と、チョンは言う。