「重力はなぜ存在するのか?」という問いは、物理学の歴史の中で極めて重要な役割を果たしてきました。数多の物理学者がこの謎に挑み、自然界の基本的な法則や宇宙の構造を解明していったのです。
カルフォルニア大学バークレー校教授で、素粒子物理学や宇宙論を専門とする野村泰紀さんも、そうした謎に挑む1人です。本稿では、野村さんの最新刊『なぜ重力は存在するのか』からの抜粋で、「ニュートンのリンゴの逸話に隠された物理学における重要ポイント」について紹介していきます。
月にもリンゴにも等しく働く
ニュートンが発見した「万有引力の法則」について紹介していきましょう。
「万有引力」とは、文字通り、「万物(あらゆる物体)が有する引き合う力」を意味します。そもそも地球をはじめとする天体は、塵とガスが万有引力によって引き合い、少しずつ集まっていくことで誕生したと考えられています。万有引力がなければ、私たちはそもそも誕生していなかったわけです。
さて、よくこの万有引力の発見の経緯について、ニュートンはリンゴが木から落ちる様子を見て、その法則を発見したと言われることがあります。しかしこの逸話は、事実だったかどうかを別にしても、逸話として意味を成していません。
なぜリンゴが落ちるのを見ると、万有引力を思いつくのでしょうか?
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