「リンゴの落下から万有引力を発見」実は間違い? ニュートンの逸話に隠された「なるほど物理学」

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

ここで、「投げたボールは地面に落ちるのに、月が地上に落ちないのはなぜ?」と疑問をもつ人もいますよね。

投げたボールが地面に落下してしまうのは、ボールの軌跡が地面と交わってしまうからです。

地球は球なので、地面は平坦ではなく実は曲がっています。そこで、ボールの速度をどんどん上げていき、遠くまで飛ぶようにすれば、ボールの落下の幅と球面である地面の下がる幅が一致し、ボールと地面との距離は縮まらなくなります。

その結果、ボールは月のように、地面との距離を一定に保ったまま、地球の周りを回り続けることになるのです。

月が地球の周りを回り続けられる理由

このときの速度を、「第1宇宙速度」といいます。具体的には、秒速7.9キロメートルになります。さらに速度が上がり、秒速11.2キロメートルになると、地球の重力を振り切って地球から離れることができます。この速度を、「第2宇宙速度」または「脱出速度」といいます。

『なぜ重力は存在するのか 世界の「解像度」を上げる物理学超入門』書影
『なぜ重力は存在するのか 世界の「解像度」を上げる物理学超入門』(マガジンハウス新書)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

しかし、地球の重力を振り切っても、今後は太陽の重力に捕らえられてしまいます。太陽の重力を振り切って、太陽系外へ飛び出していくために必要な速度は、秒速16.7キロメートルで、「第3宇宙速度」といいます。

円運動(正確には円に近い楕円ですが)をしている月は万有引力を受けているので、地球の中心方向に加速度をもっていることになります。したがって、円運動は加速度運動といえます。

このことを月の視点から見ると、月は加速度運動をしているので、地球と反対方向に遠心力が働くということになります。

つまり、月の視点では、遠心力と地球からの万有引力がちょうど釣り合っているため、月は地球に落ちることなく、地球の周りを回り続けているということになるのです。

野村 泰紀 カリフォルニア大学バークレー校教授

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

のむら やすのり / Yasunori Nomura

1974年、神奈川県生まれ。バークレー理論物理学センター長。ローレンス・バークレー国立研究所上席研究員、東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構連携研究員、理化学研究所客員研究員を併任。主要な研究領域は素粒子物理学、量子重力理論、宇宙論。1996年、東京大学理学部物理学科卒業。2000年、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了。理学博士。米国フェルミ国立加速器研究所、カリフォルニア大学バークレー校助教授、同准教授などを経て現職。著書に『マルチバース宇宙論入門 私たちはなぜ〈この宇宙〉にいるのか』(星海社)、『なぜ宇宙は存在するのか はじめての現代宇宙論』(講談社)など。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事