「認知症とお金」早期治療・ケアで必要な金額は? 300万円の新薬の「メリット」は?専門家に聞く
ひと口に認知症といっても原因によってさまざまなタイプがあるが、最も多いのが、脳の神経細胞が正常な加齢よりも早く減っていくアルツハイマー病だ。症状の進行度によって軽度、中等度、高度に分けられる。
認知症の前に、軽度認知障害(MCI)という時期もあり、軽度の認知症と合わせて「早期」に分類する場合もある(※外部配信先では図表を閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)。
認知症の場合、1人ひとり病状や進行度が異なるうえ、家族や仕事の状況によってもケアの費用は変わってくる。そうしたことを踏まえても、どれくらいかかるものなのか。
家族がケアする費用はいくら?
この点について、東京大学大学院特任准教授の五十嵐中(あたる)さんがまとめている。公衆衛生学や医療政策を専門とする研究者だ。昨年、認知症のケアにかかる費用などについて過去の研究を含め、論文を執筆した。
認知症のケアに関わる費用は大きく3つに分かれる。「直接の医療費」と「公的介護費用」、それから「家族・介護者のインフォーマルケアコスト」だ。
直接の医療費とは、医師の診察や検査、薬などにかかる費用のこと。公的介護費用は、認知症早期だとあまり使用することはないが、介護保険を利用して受ける訪問介護(ホームヘルパーによる)、通所介護(デイサービス)、訪問入浴介護などの費用だ。
各サービスに単価があり、例えば、介護スタッフが専用の浴槽を積んだ車で訪問して入浴をサポートする訪問入浴介護は、地域や事業所によっても異なるが、自己負担が1割なら1回あたり1200円ほどとなっている。
インフォーマルケアとは聞きなれない言葉だが、「日本語に直すと“非公式のケア”。つまり、お金を払って行ってもらう部分を、家族らが無償で代行しているケアを指します。日本の実態として、多くは家族が無償で、水面下で苦労しています」と五十嵐さん。
そのため、認知症のケアの費用を考えるには、医療費や公的介護費用だけを見ても仕方がないという。「インフォーマルケアを可視化して考えなければ、認知症の全容は見えません」(五十嵐さん)
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