シンガポールやスイスの場合、ビザや費用が大変なことは身を持って経験しています。しかし、高いことにはそれなりの理由があると思います。なにより、次世代の教育への投資以上に大切なものがあるでしょうか? 家や車を売って、勤務形態を変えてでも投資する価値があるのが、次世代への教育投資だと思います。それは所得や資産の状況というより、21世紀に起こる変化、とりわけ日本の未来をどう見るかにかかっていると思います。
私は数字でそれを見ています。政治家として本当の数字に早く触れてこられたことが大きかったと感謝していますが、そういう数字はもうすでにだいたいオープンになっています。これからの日本はギリシャ以上に危うくなるのは目に見えています。それでも日本仕様の子どもに育てますか? ということです。
これをどれだけ強く意識できるかが、資産や所得以上に、親御さんの行動の違いに出てくると思います。
シンガポールでの教鞭は緊張感がある
――現在、リー・クアン・ユー公共政策大学院で教鞭をとっています。シンガポールからみて、日本の教育を受けた人々の特徴をどう見ていますか。
学生と言っても私の生徒はアジアで一旗あげたいという社会人なので、日本人でもおもしろい方が多いです。特に起業家の方は、ゼロから組織を立ち上げ自分で営業もするような方ですから、世界の同世代と比較しても自主性やクリエイティビティにあふれ、リスクテイカ―です。
オーナー企業のオーナーもいらっしゃいますが、実績が豊富で的確な質疑をされます。同僚の教員達も、私の生徒である日本人の前に立つとき「普通の日本人とは違うから」と、とても緊張しています。
すでに当校に来るまでに留学経験がある人も多いですが、やはり社会に出てから多様な経験を積まれているので、日本人の枠に収まらない人が多いですね。社会に出ていろんな経験をされた上で、シンガポールまで時間とおカネを使って学びに来る方々は本当に多彩な方が多いです。
ただ、日本人の中ではかなり異例な人たちだと思っています。自分の子どもを通じて幼児教育に触れられ、そして人生の最後の教育であろう社会人教育を仕事としてやらせていただく今のシンガポールでの立場に深く感謝しています。
――ほかに、日本の読者に伝えたいということはありますか。
教育は内容も大事ですが、どこで誰に囲まれるかも勝るとも劣らないくらい大事だと思います。よくうちのクラスの親たちと言ってます。
「この子たちはやがて世界に散らばっていくけど、どこかですぐに再会する。小学生か中高生か大学生になった時に。その時、世界中に泊めてもらえる場所があって協力してくれる友人がいて、本当に幸せだよね」と。
世界から人材を集める強い“引き”をもったシンガポールで、高度に訓練された教育者から、これから世界を動かす仲間に脳がいちばん稼働している時期に出会うことがいちばん重要だと思っています。
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