精神科医が解説「幸せを感じている60代」の共通点 悪い記憶から生じる感情をどう断ち切るべきか
1つの嫌な感情が全体の白黒を決めてしまうことはよくあることですが、大人になるというのは、ものごとを多面的に見られるようになるということです。
教師が信じられないという男性に、「不良になったのに、なぜ今は真面目に働いているのですか?」と聞きました。答えは「両親が自分のことを信じ続けてくれたから」と話してくれました。
「それでは、あなたが親になったら、お子さんのことを信用できる親になればいいのでは」と伝えるとパッと顔を明るくして、「そうですね。それだけですね」と言いました。
このように感情と事実を分けて考えることを「脱フュージョン」といいます。感情的になっている記憶を腑分けしていくと、事実が見えてくるはずです。
教師にもいろいろな人がいる。教師には疑われたけど、親は信じてくれた。子ども心に反抗したけれど、親のおかげで立ち直った。事実を見ていくと、中学時代への悪感情だけでなく、いい思い出もあったことに気がついていきました。
自分の感情と起こった事実を分けて考えてみましょう。悪感情に自分の心が巻き込まれてしまい、恨みをもち続けると前には進めなくなります。
フュージョンが起きたときは自分を客観視
悪感情と事実が一体化したフュージョンが起こったときに試してほしいことがあります。「俯瞰して自分を見る視座をもつ」ことです。脳から自分を切り離して、「自分が今、どのようなことを考えているのか」を客観的に眺めてみます。
たとえば、自営業のHさんは、近くに住む同級生たちがうらやましくなります。彼女たちの夫は年金もたくさんあって、働かなくてもよく、豪華なランチに旅行にと、遊んで暮らしているように見えます。
いつまでも働いている自分を惨めに思うこともありました。そういうひがむ気持ちが出てくると、次に、体を壊して夫婦が営む店をたたむことになったらどうしたらいいのだろうと、将来への不安が襲ってきます。不安になると、もっと稼がなくてはと、気持ちが焦ったりしました。
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