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秋田の無人駅で「"がっこ"爆売れ」感動の舞台裏 "漬物危機"に瀕したお母さんたち「3年間の奮闘記」

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加工所を作るための総費用は460万円。2分の1を秋田県、4分の1を北秋田市が補助し、残りの100万円を自己調達することが決まり、2023年8月に加工所建設に着工、11月1日オープンを目指した。

だがこの時点で、自己調達分100万円あまりは手元になかった。これからクラウドファンディングで集めるのだ。

当時を振り返り、松橋コト子さん(85歳)は「うまく集まらなかったら、みんなでなんぼ出さねばだめだべって、すごく心配でした」とその胸中を打ち明ける。

専業主婦の傍ら、楽しみを兼ねてがっこ作りをしてきたお母さんたちである。がっこ市で売る漬物も1パック200円や300円。売り上げよりも「うちのがっこが喜ばれる」ことが生きがいだ。そんなお母さんたちにとって自己調達の費用は重たく響いた。

2023年9月25日~10月末にクラウドファンディングを実施。蓋を開ければ目標額を超える312万9750円が集まった。クラファンの手数料や返礼品の費用150万円ほどを差し引くと、使えるお金は160万円ほど。それを工事費用に回し、残った分は今後の設備購入費に充てる。

資金繰りから運営方法まで、念入りに会議を行った(写真:Anique)

がっこステーションが「新ビジネス」と認められた

ついに2023年11月1日、漬物加工所併設「阿仁比立内がっこステーション」がリニューアルオープン。漬物製造許可に加え、密封包装食品製造許可、飲食店営業許可も取得した。がっこ市のメンバーだけでなく誰でもこの加工所で調理、販売する場として活用できる。

完成した交流スペース兼コワーキングスペース。窓の外を内陸線が走る。左奥に見えるのが完成した共同加工所(写真:Anique)

改修費用の半分を補助したのは、秋田県農林水産部農山村振興課が担当する「未来へつなぐ元気な農山村創造事業」の補助金だった。2022年に創設したばかりの新しい制度で、地域特産物のブランド化や農山村発の新ビジネスを後押しすることを目的にする。

がっこステーションの補助金申請が認可されたのは、3つの点で高ポイントだったからだと、同課調整・地域活性化チームの青木隆行さん(44歳)は語る。

「1つが、長く続けてきたがっこ市を存続させ、次世代の漬物作りの担い手を育成し、がっこ文化を継承していくということ。

2つめは加工所では漬物だけでなく、大阿仁地区の名産・伏影りんごを使ったジャムや豊富な山菜の加工食品も製造、販売していくこと。

3つめは無人駅の内陸線比立内駅を活用すること。無人駅が地域資源として生まれ変わる。まさしくこの補助金事業が求めるところです。非常におもしろいと思いました」

大阿仁名産の伏影りんごを使ったジャム(写真:Anique)

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【がっこの価格設定も重要な課題】

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