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神奈川県の中南部に位置する茅ヶ崎市。太平洋に面した「海の街」としてのイメージが色濃い同市で、地域活性化政策として注目を集めている事業がある。2025年7月に開業を控える「道の駅 湘南ちがさき」だ。
地方創生の拠点になることが期待される施設だが、地元は歓迎ムード一色ではない。茅ヶ崎市が建物の整備や運営を担う事業者を公募した結果、茅ヶ崎の企業グループではなく、大阪市に本社を構える大手建設業・大和リースを筆頭とする企業グループが選ばれたからだ。
地域の持続的発展を目指す事業にもかかわらず、茅ヶ崎市周辺を拠点にする企業の連合体が落選した結果について、茅ヶ崎の住民からは「長い目で見たとき、これで地域経済は活性化してゆくのだろうか」と疑問の声があがっている。
構想段階だった約15年前から市と歩調を合わせて準備してきた地元企業の連合体が、なぜ市による審査で大和リースに敗れたのか。関係者を訪ね歩き、事情を聞いた。
地元経済界の念願だった
茅ヶ崎市観光協会顧問の田中賢三氏は、市による審査で落選した地元企業グループ「チーム茅ヶ崎」のリーダーを担ってきた人物だ。これまでの経緯をこう振り返る。
「東名高速道路などと連結する『さがみ縦貫道路』が2014年度末に全線開通し、茅ヶ崎市へのアクセスは大幅に向上した。地元の企業は高速道路が完成する以前から『地域振興』を目指して関係各所と連携を深めてきた。茅ヶ崎市には観光名所が少なく、箱根や鎌倉へ向かう観光客の通過点になっている。そうした背景から、産業振興・地域活性化を促進する道の駅を是非とも作りたいというのが地元経済界の悲願だった」
田中氏は、自身が同市商工会議所会頭を務めていた2010年頃から、県外に設置された「道の駅」を視察し、地元経済界の代表者らとともに施設の運営管理方法などを学んできた。
茅ヶ崎市が「道の駅基本計画」を策定する6年も前に、当時の市長宛に道の駅設置要望書を提出。その後は、自身が経営する日本精麦を筆頭とする企業グループ「チーム茅ヶ崎」を結成し、地元企業が出資者となる「まちづくり株式会社」を設立した。観光客だけを収入の頼みとするのではなく、地元住民の生活と一体となった地域経済循環型の運営を目指していた。
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