だが、茅ヶ崎市のホームページには、どんな提案内容が高く評価されたかなど具体的な記述はなく、抽象的な講評にとどまっている。詳しい審査過程を知りたいと、選定委員長を務めた青山学院大学大学院会計プロフェッション研究科の山口直也教授に東洋経済編集部から取材を申し込んだが、守秘義務を理由に断られた。
そもそも「道の駅 湘南ちがさき」は2015年1月、国土交通省が認定する「重点 道の駅候補」に選定されるなど、国の「地方創生政策」と関連深い事業でもある。茅ヶ崎市の地域再生計画にも、地域活性化を目指す具体的な事業の一つとして「道の駅整備推進事業」が挙げられている。
地方創生を具体的に実現していく拠点としての発展を目指すならば、長年構想を練ってきた地元経済界との協力は不可欠なはずだ。だが、選定委員会の講評からは「地域活性化の可能性」がどれほど評価されたのか判断できない。あるいは、「地方創生」の観点は評価の対象ではなかったのか。
いずれにしても、これではチーム茅ヶ崎のメンバーが審査のありかたに疑義を抱くのも無理はないと言えるだろう。審査の詳細を知るために選定委員会の議事録を情報公開請求したが、当初市から示された公開日は延長され、当記事掲載時点では開示されていない。
地元生産者の想い
「道の駅 湘南ちがさき」の建設予定地から車で3分程度離れた海岸沿いに、釜揚げシラスをはじめとした新鮮な魚介類を販売する「茅ヶ崎イシラス」の直売店がある。代表の石田智氏は、チーム茅ヶ崎への参画を表明していた。受注を決めた大和リース側の運営会社からも出店の誘いを受けているが、出店するかどうかはまだ決めていない。これまでの過程を知る地元の生産者として、石田氏は複雑な心境を吐露した。
「道の駅は、地域経済活性化のためにも茅ヶ崎や周辺自治体の企業が運営主体になるものとばかり思っていたので、栃木県の企業が運営すると聞いて驚いた。観光客向けの価格水準では、地域住民は寄り付かないだろう。オープン当初は物珍しさに誘われ地元住民も行くかもしれないが、結局は『トイレ休憩の場所』になってしまうのではと心配している」
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