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TPP加盟国と連携に舵を切るEUの勝算と落とし穴/11月のTPP閣僚会合にEU代表が出席/グローバルなルールメーカーと新興国の微妙な関係

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※本記事は2025年10月29日6:00まで無料会員は全文をご覧いただけます。それ以降は有料会員限定となります。
米中の脅威を念頭に、EUがTPP加盟に舵を切っている(写真:Bloomberg、metamorworks/PIXTA)

欧州連合(EU)が環太平洋連携協定(TPP)に急接近している。11月29日に予定される、オーストラリアの首都メルボルンでのTPP参加国閣僚級会合に、EUの通産相であるマロシュ・シェフチョビッチ欧州委員会上級副委員長が出席する運びとなった。米中の脅威を念頭に、TPP加盟国と通商関係を強化する狙いだ。

欧州を中心にロシア、トルコ、新興国のマクロ経済、経済政策、政治情勢などについて調査・研究を行うエコノミストによるリポート

アメリカのドナルド・トランプ大統領は、いわゆるGATT/WTO体制の下で構築された自由貿易の原則を反故にし、独善的な通商政策に邁進する。一方の中国は、重要鉱物、特に希土類元素(レアアース)の輸出制限をテコに、各国に圧力をかける。このような中で、EUは第三軸の形成を目指し、TPP加盟国に接近しているわけである。

ここで日本以外のTPP加盟国を確認すると、アルファベット順に、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、イギリス、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナムの12カ国である。そのうちの多くが、かつての植民地政策の経緯から、EUと袂を分かったイギリスと関係が深い点が興味深い。

つまりオーストラリアとブルネイ、カナダ、マレーシア、ニュージーランド、シンガポールの6カ国は、イギリスとその旧植民地の諸国から構成される「イギリス連邦」(コモンウェルス・オブ・ネイションズ)という緩やかな国家連合の加盟国である。イギリスは2024年12月にTPPに加盟したが、これはある意味、合理的な決断と言える。

EUはTPP加盟国との関係が希薄だ

一方で、EUとTPP加盟国との関係は必ずしも深くない。歴史をひもとけば、ペルーはかつてスペインの植民地だったし、ベトナムもフランスの植民地だった時期がある。とはいえ、イギリスとイギリス連邦の加盟国のような、現時点での具体的なつながりがあるわけではない。そうした意味で、EUがTPPに接近することには、いささかの違和感を禁じえない。

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