「深刻な観光課題」を解決、需要を維持する方法 星野代表が取り組む「長門湯本温泉」再生への道
JNTO(日本政府観光局)によると、2023年10月のインバウンド(訪日外国人旅行者)は251万6500人と、新型コロナウイルス感染症拡大後、初めて2019年同月比の数値を超えた。一方、9月のアウトバウンド(日本人出国者)は100万4730人で、2019年比-42.6%と戻りが鈍い。現在の円安基調からすれば当然であろう。
どこかで顧客満足度が下がりはじめる
こうした状況を踏まえ、「これまで海外旅行をされていた人たちの旅行ニーズを、いかに国内旅行に取り込んでいくかが、日本の観光業界にとって大切なテーマだ」と話すのが、星野リゾート代表の星野佳路氏だ。
ただし、「やみくもに観光客数(入込数)を増やしていけばいいわけではない。2019年時点の日本の観光は、インバウンドの数だけを見れば一定の成功をおさめていたように思われるが、その一方で大きな弊害も生んでいた」と指摘し、その顕著な例としてオーバーツーリズムを挙げる。
「オーバーツーリズムの影響で本当に深刻なのは、長期的に見て観光地のブランド価値を下げていく点にある。入込客数や宿泊客数の増加を追求し続けていると、どこかのタイミングで顧客満足度が下がりはじめるタイミングがある。それに気づかずに、さらに数字を追いかけ続けていると、やがてその観光地を気に入ってくれていた大事なお客様から失っていくことになる。これは、工業製品におけるプロダクト・ライフサイクルの理論とも重なる」
こうしたオーバーツーリズムに代表される観光課題を解決しつつ、継続的に観光需要(満足度)を維持するために星野氏が提唱するのが、「ステークホルダーツーリズム」だ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら