「深刻な観光課題」を解決、需要を維持する方法 星野代表が取り組む「長門湯本温泉」再生への道

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こうした条件を提示すると、たいていは二の足を踏んで断られるという。行政や各事業者が足並みをそろえ、巨額の費用をかけて温泉街全体を再生するなど、なかなかできることではないからだ。

想像していた以上に本気だった

「ところが、大西さんをはじめ地元の人たちが、『それでいきましょう』と言う。こうなると、うちとしても、やらざるをえなくなった。冗談に聞こえるかもしれないが、本当にそうだった」と笑いながら、星野氏は当時を振り返る。長門湯本は、星野氏が想像していた以上に本気だったのだ。

ここで疑問に思うのは、地元の旅館事業者の中に星野リゾートが来ることへの抵抗はなかったのかということだ。この点について地元の旅館・玉仙閣専務の伊藤就一氏に尋ねると、「(待遇面などを考えると)従業員を取られるのではないかという声が一部(他の旅館)にあったのは事実。だが、それは杞憂にすぎず、星野さんは自社でトレーニングされたスタッフを連れてきた。また、客層も完全に被るわけではなく、むしろ知名度を生かした宣伝力への期待のほうが大きかった」と話す。

こうして話が進み、まずは長門市が星野リゾートに委託してマスタープランを作成し、この星野リゾート案をベースに市がまちづくり計画を策定した。その内容は小さな温泉街としては壮大なもので、現代の主な旅行ターゲットである個人客やインバウンドも楽しめる温泉街に生まれ変わることを目指し、温泉街全体のランドスケープをつくり直すというものだった。

車道を狭め、歩道を広く確保して歩きやすくなった長門湯本温泉街(筆者撮影)

具体的には、当時の長門湯本温泉街では、回遊性の低さが大きな課題になっていた。温泉街の中心には路上駐車が連なり、狭い道を車が速度を出して走っていて、安心して回遊できる状況ではなかった。

長門湯本温泉街の中心を流れる音信川は親水性が高くなった(筆者撮影)

そこで、駐車場を温泉街の中心から離れた高台に移し、歩道を広げるとともに、街の中心を流れる音信(おとずれ)川に飛び石や川床を配置して親水性を持たせるなど、「そぞろ歩き」が楽しめるまちづくりを進めることになった。事業費は公民あわせて21億円と試算された。

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