秋田の無人駅で「"がっこ"爆売れ」感動の舞台裏 "漬物危機"に瀕したお母さんたち「3年間の奮闘記」

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共同加工所でがっこ作りをするようになって、それまで何十年も自宅で秘伝の味を守ってきたお母さんたちは、初めてがっこ市メンバー、つまり他人の作り方を見ることになる。皆、興味津々。味見をさせてもらえば、作り方を知りたくなる。

「がっこ市のメンバーはそれぞれ自分のレシピを持っていて、何冊もノートに書き込んでいます。作り方を教えてくれる人もいるし、“企業秘密”だからって教えない人もいます。私たちはなんでもありなんです」とメンバーの鈴木良子さん(67歳)はにっこり笑う。

確かに独立採算制のがっこ市ではメンバーといえど、商売ではライバル。出品する商品の値段づけも、メンバーがつける値段をちらちらと横目で見ながら決めるらしい。

がっこ
共同加工所ではがっこ作りのワークショップも開かれる(写真:Anique)

あえて「減塩運動」に反した商品づくり

がっこステーションがオープンして、もっとがっこ市を盛り上げたい、たくさんの人に喜ばれるものを作りたいという思いは強まった。

良子さんはがっこ市に出品するようになってから、どんな漬物が好まれるかを考えるようになったと話す。

たとえば味噌漬け。今の味噌漬けの主流は塩分控えめ。これは脳卒中の死亡率が高い秋田県が40年以上に及び取り組んできた減塩運動の結果ともいえる。

しかし、がっこ市には「昔のビリッとした味つけの味噌漬け、ねが?(ないか?)」という年配のお客さんが少なからずいるという。良子さんはそういう人たちのために、減塩運動以前の秋田県独特の“ビリッとしょっぱい”味噌漬けを作りたいと考えている。少量多種もがっこステーションの強みだ。

がっこ
お母さんたち手作りのこだわりの「がっこ」たち(写真:Anique)

加工スペースのみならず、コワーキングスペース兼交流スペースも着実に新しい人の流れを作り出している。個人の場合は利用料無料、Wi-Fi完備。飲食物の持ち込みOK。1杯300円で美味しいコーヒーも提供している。

「商工会や地元の婦人会が会議で利用してくれたり、この辺は飲食店がほとんどないので友人グループの集まりやクラス会などにも使ってもらったりしています。また、Wi-Fiがつながるのでスマホのアップデートのためにやってくる人もけっこういますね」(前出の斎藤さん)

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