「自信過剰な人」をリーダーにするのは進化のせい 「大言壮語」を信じがちな人類のやっかいな傾向

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もしあなたが、渇きですでに死にかけていたら、何もしないでいるのはたいてい最悪であり、確かだと勝手に思い込んでいる人に従うほうがまだましですらある。

今日ほとんどの人間は、食事が得られなかったりオアシスを見つけられなかったりして死ぬようなリスクには直面していない。だから、しばしば間違っているにもかかわらず、いつも自分は正しいという確信を抱いている人に従うのは危険で、たいした見返りは期待できない。

これも進化のミスマッチの1つに数えられる。自信過剰になるという、過去には適応的だった行動は、私たちの暮らす世界が変わってしまったために、今や「非適応的」だ。それにもかかわらず、自信過剰が相変わらず蔓延(まんえん)している。

キャメロン・アンダーソン教授とセバスチャン・ブライオン教授が一連の調査を行うと、実験で編成した集団の中では、無能でも自信過剰な人々が素早く社会的な地位を獲得することがわかった。

能力が簡単に測定でき、誰の目にも明らかなときにさえ、自信過剰な人は他の人々から実際以上に有能だと認識された。この点では、私たちはミーアキャットに少し似過ぎている。

大言壮語が多くの助成金を得る

2019年にビル&メリンダ・ゲイツ財団への研究助成金申請を調べたところ、同様に、提案する研究の潜在的な影響について、より幅広く大胆な言葉を使ったもののほうが、幅が狭く、より専門的な言葉を使ったものよりも、多くの助成金を受けていることがわかった。

ところが、提案された研究が実施された後、幅広い成果をあげられると主張していたものと、より専門的な主張をしていたものとの質は、同等だった。

そして、気の滅入るような問題点もあった。性別による大きな偏りがあったのだ。女性はたいてい、裏づけることができる正直で慎重な言葉で書いていた。一方、男性には大言壮語がよく見られた。

私たちには、自信過剰を受け容れやすい傾向があるので、男性のほうが多くの助成金を得ていた。しばしば間違っているにもかかわらず、いつも自分は正しいという確信を抱くことが、私たちの世界のあまりに多くの場面で依然として必勝法なのだ。

(翻訳:柴田裕之)

ブライアン・クラース ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン准教授

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Brian Klaas

ミネソタ州で生まれ育ち、オックスフォード大学で博士号を取得。現在はユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンの国際政治学の准教授。『アトランティック』誌の寄稿者で、『ワシントン・ポスト』紙の元ウィークリー・コラムニスト。受賞歴のあるポッドキャストPower Corruptsのホストを務めている。個人のホームページはBrianPKlaas.com、Xのアカウントは@BrianKlaas。

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