物言う株主(アクティビスト)の存在感が高まってきた。三井住友信託銀行の集計によると、6月の株主総会で株主提案を受けた上場企業は過去最多の91社にのぼった。
提案の内容は株主利益の最大化に加え、近年は気候変動問題への対応やサプライチェーン上の人権問題など、社会課題にかかわる提案が増えている。
そうした中、テレビ朝日ホールディングスでは異例の株主提案がなされた。6月28日、田中優子前法政大総長と前川喜平元文科次官が共同代表を務める市民グループ「テレビ輝け! 市民ネットワーク(以下市民ネット)」は、テレビ朝日の株主総会で「政治の圧力」をはね返すための株主提案をした。「報道の自由」を求める株主提案は、おそらく日本で初めてだろう。
市民ネットのメンバー49人は、テレ朝株4万400株を保有し株主提案権を得て、4つの議案を出した。定款の一部変更や、前川氏の社外取締役案だ。
政治権力からの圧力か
提案の核心が、定款の一部変更である。
〈政治的な権力を持つ者からの圧力、介入により、報道機関の公正報道を保ち難い疑いのある事例が過去10年以内に存在した場合、独立の第三者委員会を設立し、調査、公表する旨の定款を追加する〉
安倍晋三政権下の2015年1月23日。当時、ニュース番組「報道ステーション」のレギュラーコメンテーターだった古賀茂明氏(元経済産業省官僚)は生放送中に「I am not ABE」と発言。これに、菅義偉官房長官(当時)の秘書官だった中村格氏(のちの警察庁長官)から掣肘(せいちゅう)を受けたと、古賀氏の著書『日本中枢の狂謀』には書かれてある。
株主提案の背後にあるのは、テレビ朝日の報道現場において、過去、「政治権力を持つ者からの圧力、介入」があったのではないかという疑いだ。
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