「売上高=客数×客単価」という前提で考えれば、値上げ(単価上昇)をすれば、客数が減るという恐れがあり、「値上げ後単価×減少後の客数」がプラス以上に維持できる水準を探りながら実験していくしかない。コロナで財務基盤を毀損している企業も多い中、経営のかじ取りはかなり難しくなっている、と言わざるをえない。
特に人手不足、人件費の上昇については、インフレ環境に転換したことを前提とするならば、一過性ではなく、継続的な課題として取り組まねばならない。いわゆる労働力人口が減少していくため、人手不足は解消することはなく、異業種を含めた相対的な比較の中で待遇改善を図っていかねば、必要人員が確保できなくなる。
賃上げによる「兵糧攻め」を図る大手
最近、新聞紙上でもコロナ後の賃上げ率のランキングを発表していたが、全産業中のトップが外食最大手ゼンショーであった。こうした局面は、収益力のある大手にとっては、賃上げは他社から人材を奪うための積極的な競争要因ともなり、大手はその規模の利益を最大限活用して賃上げ競争に持ち込み、「兵糧攻め」するという選択肢がある。
中堅中小外食にとっては、人手の確保をできないことは死活問題ともなりうるのだが、賃上げ競争という同じ土俵に上がるだけでは勝算が乏しいであろう。
一般的に、外食チェーンは、チェーンストア理論に基づき、店舗の標準化、オペレーションのマニュアル化、物流の効率化、といったインフラを構築して、同質の店舗を増やしていくことで収益を上げる、という作りになっている。
この仕組みにおいては、店舗スタッフは決められた作業手順を粛々とこなす労働力として位置づけられており、パート・アルバイトで人件費を抑えた運営をすることを想定している。これはチェーンストアがスピーディーに店舗数を増やして成長していくための仕組みであり、また、安い労働力を提供してくれる人が数多くいることが前提でもあっただろう。
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