「頭がいい人」ほど前例にとらわれる当然の事情 「失われた30年」につながる明治の官僚システム

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仕事のできない人についてはレベルを引っ張り上げようとはするのだけれど、それでもダメだったら切り捨てていく。

そうすることで、大企業の工場で働いているような人たちのスキルは同レベルになり、安定した工業生産ができるようになった。

こういったやり方がもっともコストパフォーマンスがいいということで、1960年代あたりから全国的に行われるようになり、1980年代の終わりぐらいまでは、この思考とやり方でうまくいっていた。

この時期の日本は、家電や自動車などの製造販売によって世界を席巻し、戦後焼け野原だった日本の国民総生産(GNP)は、1968年に世界2位まで躍進した。

ところが1980年代の終わりから1990年に入った頃になると、だんだんこういうやり方では立ち行かなくなってきた。

平均的な労働者を育てることばかりを優先してきたせいで、アメリカのようにイノベーションを起こすことのできる天才的人材を育てようとしなかったことが、その大きな原因だ。

明治維新が生んだ官僚的エリート

平均的な労働者を育てるというのは戦後からの話ではなく、明治の頃からずっと続いてきたものである。

江戸時代の終わりに革命のようなもの(明治維新)が起きて、その時には優秀な人間がたくさんいた。しかし、すごく特殊な才能があったがゆえに敵対勢力から目を付けられて、失脚させられたり、殺されたりしていった。

そうして割と官僚的な人間たちが明治維新を生き伸びることになった。そういう人たちが明治以降の日本をつくってきたわけである。

官僚的な人間たちは自分たちと同じような人材を育成するために、帝国大学や陸軍士官学校、海軍兵学校などのエリート養成学校をつくった。

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