「頭がいい人」ほど前例にとらわれる当然の事情 「失われた30年」につながる明治の官僚システム

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改めて指導者としての東條の実績を見てみると、たいていの場合は調停役を務めるばかりで、何か独自に発案し決行するということがほとんどない。

秀才タイプの人間は前例のあることならば前例にならってうまく対応できるが、前例がないことが起きたときにはどうしようもなくなってしまうのだ。

これは今の日本とまったく同じで、前例のない未曾有の事態を迎えたときにどのように対処するべきか、創造的な手段を考えつくことができない。試験での正解ばかりを追求してきたから、どうしても前例主義に陥ってしまう。

そうして敗戦となった日本は、戦争という行為への反省こそ口にすることはあっても、教育については教育勅語こそ廃止したが、試験を優先する人材育成のシステム自体への反省は一切なく、明治から続いているやり方を令和の今も続けている。

優秀な子供たちが海外の大学へ

日本が凋落した最大の原因は、横並び主義で、ちょっと変わった、才能のある人間の頭を叩いて潰してきたことだと、私は考えている。

ある意味で特殊な人間を引き立てる思考や組織のシステムがあれば、"失われた30年"はなかったかもしれない。

みんなが同じことをやっているなかで、一部の特殊な人間がGAFAM的なものを生み出していた可能性はあっただろう。

しかし今ではそういう才能ある人たちは、もう日本にいても仕方がないと考え、外国へ逃げてしまう傾向が顕著だ。

だから日本はますますダメになってしまう可能性が高い。ここから再建するとなると、なかなか難しいと言わざるを得ない。

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