しかし、兄も年金生活に入ると、いつまでも援助を続けられるわけではありません。Aさん兄弟には施設に入居している高齢の母親もおり、兄は母親の主な介護者でもあります。
多少の不便があったとしても、限度額内で収まるようサービスを絞るなど、Aさんもどこかで折り合いをつけなければならない状況にありました。
体が不自由な状態で年を重ねることの大変さを肌身で感じていたAさんは、「なぜもっと早く健診を受けなかったのか」「自分は大丈夫だと思っていたのに、まさかこんなことになるなんて」と、深い後悔に包まれながら話していました。
「自分は大丈夫」の過信が怖い
健診を受けなかったり、「要再検査」と指摘されたのにそれを放っておいたりすると、病気が進行して、Aさんのように突然大病を発症することがあります。
心臓病や脳卒中になると命にかかわりますし、万が一命を取りとめても、重い後遺症が残り生活が不自由になりますし、医療費が高額になる可能性もあります。
年に1回、健診を受けることで大病を防ぐのは、将来の医療費を減らすことにもつながるのです。
以前の記事(血糖値高めを放置し「足を切断した」男性の言い訳)でも紹介しましたが、生活習慣病の怖いところは、自覚症状がないうちは日常生活で困らないため、つい「大丈夫だろう」と過信しがちな点です。
血圧も血糖値もコレステロールも、かなり数値が高くても、自覚症状はほとんどありません。私が診てきたほかの生活習慣病の患者さんも、決まって「自分は大丈夫だと思っていた」と口にします。
Aさんもある日突然、脳出血に見舞われるまでは、自分の健康状態に問題があるとは微塵も思っていなかったそうです。
こうした事態を防ぐには、とにかく定期的に健診を受け、異常を指摘されたら受診するほかありません。健診を受けていない人が、具合が悪くなって病院に行ったら、糖尿病がかなり進行していて、血管が傷つき、失明や人工透析の危険があることがわかった、というケースも決して少なくないのです。
生活習慣病は、調子が悪くなってから病院に行くのでは手遅れ。どこも悪くないときから定期的に健診を受け、病気の芽を摘んでリスクを回避しましょう。
毎年健診を受けていると、1年前と比較して自分の体の経年変化をチェックすることができます。体重や腹囲が増えていないか、血圧や血糖値、コレステロールはどうかなど、定期的に確認して、気になるところがあれば生活習慣を振り返ってみるといいと思います。
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