「コレといった実績や成果も出していない部下を、どうやって褒めろと言うの?」と思われる人もいるでしょう。そんな方はまず、たとえ大きな成果がなくても、目に見える貢献をしていなくても、部下に「承認のサイン」を示すことはできると知ってください。
まずは、その人の「存在」や「行動」を認めるということから初めてみましょう。たとえば、「ありがとう」「よくやってるね」「おかげで助かった」のような簡単な言葉でかまいません。これがひいては、相手を上手く褒めることにもつながっていきます。
上の立場にあたる人から発せられるプラスのメッセージは、部下に対して想像以上に有効に働く場合が多く、特に「○○さん、がんばったね」などと、名前を添えて声をかければさらに効果的です。固有名詞である名前は、呼びかけるだけでより強い承認につながるからです。
ある大学では、特定の学生の名前を意識的に呼ぶようにしたところ、該当学生の成績が著しく向上したという実験結果もあるほど。「おはよう、○○さん」「○○さん、お疲れ様」といったちょっとした声掛けは、今日からでもすぐに実践できるものですよね。
思考の「枠組み」を変えてみる
そういったかかわり方をするためには、言うまでもなく、普段から部下の特性や行動をよく観察していなければなりません。冒頭に挙げた「服装」や「学歴」を褒めるのとはまったく別の観点ですね。当たり前のことのようですが、なかなか実行に移せていない場合が多いもの。それでも「上司が自分のことをよくわかってくれている」と部下が安心できることが、ひとつの「承認」の在り方なのだと知ってください。
上手な褒め方につながるもうひとつのヒントとして、「リフレーミング」という思考技術ををご紹介しましょう。これは、「マイナス」を「プラス」に置き換えていくというかかわり方で、これによりポジティブな方へ意識を切り替えていくことができます。
たとえば、コップに水が半分入っている状態を思い浮かべてください。誰が見ても、コップに水が半分入っている事実には変わりありません。ただ、その受けとめ方には違いがあり、「もう半分しかない」と感じる人もいれば、「まだ半分もある」と感じる人もいます。
「もうこれしかない」と思えば、焦りや不満が生まれ、「まだこれだけある」と思えば、ゆとりと安心が生まれますよね。たとえば、「せっかち」を「機転が利く」と言い換えたり、「引っ込み思案」を「慎重」と言い換える。この方法を日頃から取り入れていくことで、部下の短所だと思っていたことが長所に思えるようになります。
この手法は部下を評価する時だけでなく、自己肯定感が低い部下の気持ちをポジティブなものに変えていくよう促す際にも役立ちます。「これしかできていない」という部下の後ろ向きな意識を、「ここまでできた」という方向へ持っていくことができるかもしれません。
出来事や現象そのものを変えることはできません。しかし、とらえ方を変換することで、意識や反応が大きく変わるのです。このことを知り、悪い連鎖を断つことは十分可能です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら