「現状維持」という意識が会社をダメにする 日立製作所相談役・川村隆氏に聞く(後編)
「部分最適」と「全体最適」
――日本の企業がこれから考えていくべきこととは。
自分のいる組織の「継続」だけを目的にしてはダメです。だから「ラストマン」(前編記事参照)として上位にいる人がきちんと決断することが大切です。「部分最適」「全体最適」という言葉がありますが、やはり会社の「全体最適」を見られる人が決断をするほうがいいわけです。
ただ実際は、「部分最適」「全体最適」の判断は、なかなか難しいものです。われわれもこの言葉を随分使いながら改革を進めましたが、「全体最適のために……」と言ってみたところで、たとえば部門を縮小される側からすれば、「たまったものではない」と感じるものです。やはり「組織の継続」が大事だと思っている人が多いわけですから。
会社の構造改革をするときは、「自分たちの扱っている製品は、大先輩から代々、続けてきたものだ」とか、「○○さんが創造したもので、日本で初めて作ったものなんだ」「これは50年前に苦労して実現させたもので、それを潰すのはけしからん」という考え方も出てきます。
それを説得するときに、「あなたのところを残そうとすると、つまり部分最適をやると、日立全体が潰れます。そうすると32万人が路頭に迷うことになってしまいます」というように、全体最適の話で「押し通していった」という面が少しあるかもしません。
――「全体最適」の考え方が薄くなると、どうなってしまうのでしょうか。
たとえば、あるフィルム会社は業績が悪くなった一方、富士フイルムは好調です。業績の差ができた原因は簡単には割り切れませんが、「フィルム」や「フィルムのカメラ」という昔の製品に固執したかどうかが大きかったように思います。
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