「現状維持」という意識が会社をダメにする

日立製作所相談役・川村隆氏に聞く(後編)

――最後に、日本のビジネスパーソンにメッセージをお願いします。

一人ひとりが変わり、その先で、組織も変わっていかないといけません。ただ、変化をするにしても、やはり組織というものの中には、大変な抵抗力があるものです。

存続に関する抵抗力。現状を維持することを目指す抵抗勢力です。それに対応する苦労は、たとえば政治の世界の人たちも身にしみて知っているかもしれません。政府が何かの組織や団体を潰そうとしても、そう簡単にはいかないものですよね。

でも、会社においては、状況が違います。なぜなら、人事権があるからです。会社では、人事権と、そして、少し血が流れるような対策を執る権利が経営側にある(もちろん、付随して責任や義務もある)。だから、企業の非常事態においては、いろいろなことが割合、早く対応できるはずなのです。

変化をもたらす存在になれているか

組織で何らかの対策をとるときは、大抵は「血が流れる」ようなことになるものです。それが会社の非常時のようなときには、皆が納得して、「しょうがないな」となって力を貸してくれるので、やりやすい。でも、本当は、そうではない“会社が平和なとき”にも、改革を繰り返してやっていかないといけません。そうしないと、その後、うまくいかなくなってしまいます。これは、経営側としてはつらいところではありますが、真実でしょう。

組織に変化をもたらそうとするときは、「もう少し後でやってくれればいいじゃないか」と言う人がいるものです。「俺の代が過ぎた後にやってくれ」と(笑)。

そうではなくて、やる人は相当な覚悟で、それこそ嫌われる覚悟を持っていなければダメです。あるいは、それを最初から宣言するべきです。「俺はこういう変化をもたらすために、ここに来たんだ」「こういうことをやるから」と。

日本では、部長になったりするときのあいさつでも、「こんな変化をもたらすために来ました」と言わない人が多い。たとえば海外に赴任したときにも、現地で「なんとか皆さんの協力をいただいて、無事、勤め上げたいと思います」などとあいさつする。それは“バツ”です。辞めるときのあいさつで、「私は大過なく終わりました」。これも“バツ”です。「大過ない」ことなどは当たり前で、「何をやり切ったんだ」というところが大事なはずです。

本当はそういうときに、「私はこの部門のここを直すために来ました。3~4年ぐらいでそれをやり遂げたいと思います」と、こう宣言するのが“マル”なのです。部下の協力をもらって、何とか穏健に3年暮らして元の部署に戻るために来たのではないんだということを、表明することが大事なのです。

しっかりと状況を把握して(情報を入手して)、プランを立てて、きちんと話す、そして実際に実行する――そんな基本的なことが、成果を出せる「ラストマン」を生むのだと思います。

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