「現状維持」という意識が会社をダメにする

日立製作所相談役・川村隆氏に聞く(後編)

デジタルカメラが登場してきたとき、自分たちでもデジタルカメラを開発しているにもかかわらず、昔からずっとやってきたカメラフィルムがまだ売れているから、インスタントカメラも堅調で、売り上げも継続的に出ているものだから……その水準がジリジリと下がっていても、“物量”で勝負することで、しばらくは社員を養うことができるかもしれません。

だからこそ、世の中の変化は「デジタル」のほうに移っていることはわかっていても、主体をそちらに移せないということになる。すると、どうなるか。結局、潰れるしかありません。

会社はそうとう小さくなってしまうかもしれないけど、「まずデジタルのほうに移っていって、旧製品のサービスだけは残しておいて、あとの資源は新しいほうに移して……」というふうに全体最適を実現していくことが必要なのです。私の中には、「何かに固執して、会社全体を傾かせるようなことにはならないようにしよう」という強い気持ちがあります。

「年功序列」の困った弊害

川村 隆(かわむら たかし)●日立製作所相談役。元取締役会長。1939年、北海道生まれ。1962年東京大学工学部電気工学科を卒業後、日立製作所に入社。電力事業部火力技術本部長、日立工場長を経て、1999年副社長に就任。その後、2003年日立ソフトウェアエンジニアリング会長、2007年日立マクセル会長等を歴任したが、日立製作所が7873億円の最終赤字を出した直後の2009年に執行役会長兼社長に就任、日立再生を陣頭指揮した。黒字化のメドを立てた2010年に社長を退任。2014年には取締役会長を退任し、現職。2010年~2014年、日本経済団体連合会 副会長。2014年からみずほフィナンシャルグループ社外取締役。著書に『ザ・ラストマン』(KADOKAWA)がある。

――変化を拒む風土をつくっているものは何でしょう。

問題のひとつは、年功序列にあるかもしれません。終身雇用はあってもかまわないと思いますが、年功序列という制度の弊害には、本当に困ってしまうことが多いのです。

こっちのAさんが部長になったら、こっちのBさんも同年次に入ったから部長にしたい、などという考え方が出てきてしまう。Bさんにも能力があるならば当然いいのですが、「同年次に入ったから部長にしたい」なんて、そんなおかしい話はないわけです。パフォーマンスベースで物事を考えないことには、会社はやっていけません。

そのうち、若い人たちがどんどん重要な役職につけられるでしょうし、それこそインド人の部長が来たりしたら、上司は外国人でしかも年が自分より10歳も若かったりもする――もはやそのような時代になっている。そういう時期にきています。だから、その「練習」をしておかないといけません。

日立グループも今はまだ、32万人の社員の中で、日本人は20万人を少し切るぐらいいます。まだ日本人のほうが多い。売り上げも、まだ日本のほうが少し多いくらいです。ですが、「人」も「売り上げ」も、両方とも、いずれ逆転するはずです。

外国の人のほうが多くなって、日本人のほうが少なくなる。売り上げも海外のほうが多くなり、日本のほうが少なくなる。そうなったときの準備をしておかないと、日本人は、みんな脱落してしまいます。

「日本の中でなんとか海外への対応をしていこう……」などと言っていられないくらい、外の変化は強いものです。「日本の中で、なんとか無理やり踏みとどまって頑張りましょう」ではなくて、「国境を越えて、どんどん展開していき、その状況の中で“日本”をどのぐらい残すか」ということを考える段階に、だんだんなってきます。

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