堀内:前回も触れましたが、NHKの番組は教科書的で予定調和的なものが多い中で、どうして、丸山さんだけが異質な番組を作り続けることができるのか。私自身も今、上智大学で「知のエグゼクティブ・プログラム」のプロデューサー的な仕事をしていて、プログラムを組み立てて参加者に理解してもらうことの大変さを理解しているつもりです。
ですから、丸山さんの企画がどうしてそんなに社内で通るのか、いったいNHKの周りの人はどうやって丸山さんに説得されているかということが不思議でなりません。
すべて異文化コミュニケーションの探求
丸山:いえいえ、説得に失敗して落ちる企画の数も多いので(笑)、とくに成功しているわけではありません。最近は、実験的な番組も増えてきていますし。ただプロデューサーになってから、企画のコンセプトを編成マンたちと対話し共有する過程で、自分自身の発想のスタンスに変化があったためか、おかげさまで少し風変わりな企画をいくつか世に送り出せています。
振り返ってみますと、プロデューサーとして最初に手掛けた「英語でしゃべらナイト」という番組が原点になったのかもしれません。あの番組は、視聴者のみなさんに英語に親しんでいただく意図もあったわけですが、毎週放送をお送りしながら、僕自身の心の中に明確にこの企画のテーマの核心は「異文化コミュニケーション」だという思いがどんどん大きくなっていきました。
毎回スタジオに海外での仕事の体験、留学体験を持っていらっしゃるような俳優やタレントの方をお迎えして、それこそ切実感をもって思わぬところで英語を使うことになった話などをお聞きし、司会のパックンが話を膨らませていくバラエティーでもありましたが、もっと異なるところに、「教養」的な要素となる大きな問いを見出していました。
すなわち、コミュニケーションとは、そもそも言語の問題なのか、と。単に文法通りにしゃべりましょうというような英語の正しさをめぐる話などではなく、人と人が出会ったとき、まったく異なる背景、文化を持つ他者同士が人間性をかけ、総体としてわかり合うということは一体どういうことなのかを考える、「異文化コミュニケーション」の探究ではないかと。そう考え出すと、単に言語の技術を超えて、人間の認識のあり方や他者性の受容の本質まで射程に入ってきます。