NHK「1000億円削減」とコンテンツ拡充の大矛盾 「6つのニュースサイト、突然閉鎖」の背景とは

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さらに、2019年度以降2027年度までの8年で見ると、1500億円以上支出が減ることになる。20%もの減少は、現実的だろうかと言いたくなる。

長期的視点で運営する人材の欠如

NHKはよくガバナンスに問題があると言われる。それは子会社が多いなど外形的なことについてだが、もっと大元に問題があるのではないか。

何しろ会長が外から来て3年ごとに交代する。そして会長が変わると理事たち執行部も一新される。3年ごとに組織の頭脳がすげ替えられるのだ。前田前会長から稲葉現会長に代わった時は、前田氏が旗を振った改革派が一掃され、反改革派が権力を握った。人事や組織、そしてネット戦略まで何もかもが180度変わってしまう。

普通の会社でもトップが変わると体制も変わるものではあるが、変化が極端すぎる。長期的な視点で運営する人がいないのだ。そんなことも踏まえてさっきのグラフを見つめると、不安しか湧いてこない。少なくとも「2027年度に収支均衡」の予算に責任を取るべき人物は、現執行部にはいないだろう。

現場はしっかりしているし、人材の質は高い。だが上層部がこんなに不安定で、公共メディアとして大丈夫なのだろうか。それもこれも、受信料がこの先ぐんぐん減少するのをどうするかに尽きると思う。ネットの時代になっても「テレビ放送を受信できる装置を設置したら契約する」という受信料制度を続けることに、軋みが生じてきたのだ。2027年度に収支均衡になったとしても、その先もさっきのグラフは右肩下がりが続くはずだ。また支出の大幅ダウンを繰り返すことになり、いたちごっこが延々続くだろう。

いますぐ、でなくてもいい。203X年にNHKをこうする、というグランドデザインの議論が今必要だ。NHKの内部文書によると、未来を示せという組合側の要望に、稲葉会長は「この時点で未来図を示すことが重要なことではない」と回答した。未来を示すのがトップの最大の役割だ。示せないなら会長の資格がないと自ら認めたようなものだ。

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