ポール与那嶺氏語る「日本企業が世界で戦う鍵」 ポール与那嶺さんにインタビュー(後編)
―――まさに、経営において多くの企業が直面しているのが人材不足です。伝統的な長期雇用と成果主義のバランスが崩れ、人材を育てられなくなっています。マネジメントできる経営者の不足という課題もありそうですが、どうでしょうか。
経営者の不足ももちろんありますが、取締役会ですよね。抜本的に組織の報酬制度の見直しが必要です。
アメリカやヨーロッパに子会社を持っている日本の企業のほとんどが、子会社の社長の報酬のほうが、本社の報酬を上回る水準になっています。野球で言えば外人選手のほうが結構報酬が高いですが、似たような発想です。
世代交代やいい人材を育てていくためにも、報酬を上げていくことは意味のあることです。それがなければ、結果的にいい人材を採用できず、いい人材を残せない、育たない状況が生まれている。トップの水準が上がらないと下も上がらない。
日本のワーカーは世界一ですよ。教育も整っている。将来的には外国人を採用していかなければならないですから、優秀な人材を得るためにも、日本国内の報酬制度の見直しは絶対に必要になってきますよね。この点もグローバルになっていく視点で見直しが必要だと思います。
複雑な日系コミュニティー
―――ビジネスの連携においてはやはり「人」が重要ですが、アメリカ本土やハワイの日系人社会も世代交代が進み、若い人たちの意識の変化も感じるのではないでしょうか。
日系コミュニティーも複雑で、世代によって違いがあります。私の祖父も含め、かつていい生活を夢見て移民として渡ってきた人たちは、まさか戦争になるとは誰も思っていなかったわけです。戦中も戦後も、白人社会の中で日系人が生活していくのはかなり大変なことでした。
その影響のためか、私たち日系3世は暗に、目立たないほうがいいよというインダイレクトなメッセージを強く受け止めてきたように感じています。
企業で言えば中間管理職、医師や弁護士がとても多い。実際、私がセントラル パシフィック バンクのCEOになったときに、アメリカの上場企業で日系人のCEOは私ただ1人でした。信じられないですよね。
3世というのは戦争の影響もあったと思いますが、ある意味抑えられていたのではないかと思うんです。それと比べて、4世、5世となると背負うものがない。すごく明るくて非常にナチュラル。われわれから見ていてスッキリします。
うちの子供たちも肌の色の違いなど関係なくわいわい仲良くやっていて、そんな姿を見ると嬉しくなりますね。
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