「30年で貧乏になった日本」で若者に起こった変化 気がついたら日本のプレゼンスも低下していた

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(撮影:今井康一)
景気は上向かないし、給料も思うように上がらない。モノの値段が次々と上がる中、実感としては貧しくなっている気がする。だが、声を大にして政治や体制を批判するのは面倒くさいし、なんだか格好悪い。今がすごく悪くなければいいんじゃないか――。日本全体になんとなく蔓延しているあきらめムードや、停滞感の正体は何なのか。日本の不自由さについて警告を発する『だからあれほど言ったのに』を執筆した内田樹氏に聞いた。

日本には外交的な哲学がない

――アメリカではイスラエルによるガザ侵攻に対する学生の抗議運動が活発でしたが、日本では抗議運動もささやかでしたし、報道も下火な感じがします。

日本はそもそも「抗議」とか「反抗」とか「抗命」ということに対して強い抑圧がかかる社会です。いったん大勢が決まると、全員がそれに流されてゆく。あえて異を唱える人は「空気が読めないやつ」として排除される。

外交も同じです。国際社会の大勢がどちらに流れるかを日和見している。ガザの虐殺についても、日本には外交的な哲学がない。ただアメリカの尻についてゆくだけです。いまガザで行われているのは「ジェノサイド」であることは日本政府だってわかっているはずです。

遠い中東のことについて、どうせ日本には何もできることなどないのだから、あえてアメリカに逆らって自分たちの立場を明らかにするようなリスクを冒してもメリットはない、そう思っている。

でも、これは国際社会に対してあまりに無責任だと思います。現に、世界のさまざまな国がこの問題についてそれぞれの見識を語っています。日本も独自のオピニオンを語るべきです。東アジアの大国として、国際秩序がどうあるべきか、世界に向けて発信しなければいけない。日本政府はその責任を果たしていません。

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